君はまだシンデレラ

カゲトモ

1ページ

「ねぇ、ちょっと話し聞いてるの?」

「えぇ、もちろんですとも。それで、その男性とは、お付き合いされることになったんですか?」

「ち、違うわよ! ほら全然聞いてないじゃない!」

 もぉ! と腕を組んで黒髪の美少女がそっぽを向いた。彼女のコースターに置かれているのはホットワイン風のノンアルコールカクテルだ。酒が飲めるようになるまであと半年ほどある、某有名大学に通う女子大生だ。

 別にうちの店は未成年出禁でもないけど、なぜ彼女がバーのカウンターに座っているのかと言うと・・・

「はっはっは、志麻にアピールするなんて見る目があるねぇ」

「ま、まぁ、確かにわたしに声を掛けたんだから見る目はあるんだろうけど」

「志麻はママに似て綺麗だからね」

「もう、パパったら」

 彼女の父親が同伴だからだ。この間まで娘が遊んでくれないって泣いていた(泣いてない)のに良かったね、常盤さん!

 ってか、志麻はどんだけ自信持ってんだよ。自分に声を掛けたんだから見る目はあるって、普通言えねぇよ? その自信の持ち方は完全に父親譲りだよな。羨ましい。

「それで、その子はどんな子なんだい」

「えー? どんな子って」

 その子を思い出す様に志麻の目が上を向く。ちらり、と視線を感じたが反応せずにグラスを磨きつつ耳を傍立てた。

「えーっと、なにかの雑誌のモデルをしているとかなんとか言っていたと思う」

 テキトーだな。

「そうかい、じゃぁ格好いいんだね」

「顔はね、お友達はみんなイケメンだって言うわ」

 そりゃモデルしてるくらいだしね。

「志麻はどう思うんだい?」

「確かに整ってはいるわ。目もぱっちりと大きいし」

 と言いつつ俺を見るな。三白眼だって格好いいだろ? 

「まぁわたしはタイプじゃないんだけど」

 へーそうなん。その子残念だな、振られるの確定だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る