割と魔王はポジティブです!

フーテンコロリ

あなた何様ですか?魔王様ですか?

ep.1 魔王様は割と……

魔王様は怒っております。何故かって?当たり前でしょう。それは魔王様が魔物の皆に内緒で毎週お買い上げになっている週刊少年ジャンペンが今日ばかりは売り切れで先週からクライマックスな展開になった連載中の「勇者のオーマ -destiny future-」の続きが読めないことについて憤怒しておられるのです。


金色の玉座に座り込んで赤黒いマントをひらつかせたジピルアが誇るべきかの魔王


「今、オーマの妹が危機に瀕しているのだ!なんとかして続きを読まねば!!!早くしなければ!魔王にオーマの妹が殺されてしまう展開に!!オーマがどうするのかとても気になるのだミギウデよ!なんとかしてくれ!!」


魔王様が憤っているのが禍々しい波動で伝わってくる。手下の猛烈魔獣幹部たちもそれに恐怖を感じてかなり後ずさる。というか上位存在の私にとってはただ鬱陶しい波動である。


「-そもそも閣下。あなた様はどちら様でしょうか」


魔王の表情が曇る。


「わ、我は!!えーっと……。うむ、いかにも魔王様だ」


怒りがしずまっていくのがわかる。


「魔王様が勇者ものの漫画を読まれてどうなされるのです?あなたは勇者様ではなく魔王様ですが」


「わ、我は魔王だっ!そんなもの勇者の動向を探っていることに他ないではないか!!」


「魔王様、それならば毎日ニンソンドーTSでRPGゲームして1日を潰さずに、もっと有効にお時間を使うことの方が最重要かと」


「ぐぬううううミギウデめ、見ておったのか」


深いため息をついた魔王様は玉座を降りて漆黒の天井を仰いだ。


「だってええ!!我も努力とか根性とか恋愛とかしてみたいもん!我だって秘密の特訓とか昔は親友だったライバルとの試合とか未知なる敵とかクライマックスの極限バトルとか大切な人を失った悲しみを乗り越えて輝ける明日とかハッピーエンドなその他もろもろなこととかしてみたいもん!!」


「閣下-」


魔王様が一体おいくつだと思われますか皆様。250,000歳ですよ、読むなら太古の遺跡の古代文字かと私は思うのですが。


「閣下は割と勇者を夢見てたんですか!!?」

ミギウデの嘆きは城中に響きわたった。


余談ではあるが、私の後ろで魔王さまの禍々しいんだか鬱陶しいんだかの波動に後ずさりした手下の猛烈魔獣幹部たちはみな魔王の気迫に気絶していたため、勇者オーマ漫画の話が城内に広がることはまったくなかった。


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