朝が来るまでずっと
戸賀瀬羊
AM1:00
「電話してもいい?」
深夜の1時に恋人からラインが入った。携帯をいじっていたから通知はすぐに気が付いたが、既読もつけないで放置する。
知り合って3ケ月。恋人という契約を交わしてから1ヶ月。人生で確か10人目の恋人は、昔そうだった奴らと同様、毎日連絡を求めて来る。でも俺は自分のペースで返す。告白された時「俺連絡そんなマメじゃないけどいいの?」ってちゃんと言ったから契約違反じゃあない。気が向かないと返信しない、とも言うが。
言ってはなんだけど、俺は今まで女に苦労したことはない。マイペースだけれども相手が何を求めてるかは分かるから、欲しい言葉をちゃんとあげられるからだと思う。伊達に国語の教師はやっていない。
ただ特に好きになって付き合うわけではないのでいずれ別れることは決まっている。今の彼女も何か月後か何年後か知らないが「どうしてもこっちを見てくれないんだね」とか言って別れを切り出すことだろう。
女ってのはどうしてこう、勘が働くんだか。
確かに俺には人生で一度だけ、好きになった人がいて、未だにその人を想っている。その人が国語の教師だったからこの仕事をしているくらいだ。
もう10年も前になるけれど、今日みたいに空気が澄んで星が良く見える夜は“あの人”のことを想い、ビールの缶をテーブルの上に積む。
そうだな……10年ってのは、純粋な好意なのか、それともただの執着なのか、分からなくさせる年月だ。
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