不滅の規制法案

@laplacegalass

第1話 表には出ない本当の気持ち

 30年ほど続いている議論がある。メディアなどもこぞって話題にしているせいか、この世界に住む人の中で知らない人はいないとまで言われている。北はカナダ、南はチリまで、文字ないしは言葉でコミュニケーションができる人はまず知っているだろうといわれている非常に物議を呼ぶ議論だ。その議論というのは"あること"を規制するかどうかを決めるためのものだ。

 その議論はことあるごとに、国の政策会議、メディア、大学の授業などで話題に上り、非常に白熱した論争を巻き起こすが、未だ一度たりとも決着がつかないまま終わっている。実際はというと、その規制法案は施行した当初から今まで一度も改正されていない。これを聞くと、規制派に分のある話のように思われるかもしれない。しかし、幾度とない議論のはてに反対派の勢力が弱まることなく、今も議論の種になるほど賛成と反対の両者の主張が拮抗していることもまごうことなき事実としてある。それについては世論調査で、ぴたっと二分した数字が出ることからも見て取れる。非常の意見の割れる議論だ。

 何についてそんなに議論してるかって、それは人体をロボット化するか否かだ。

 皆わざわざ表だって話したりはしないが、心の中にロボット化規制は賛成か反対か確固とした意見を持っている。30年も議論して決着がつかないことを雑談の場で持ち出すような野暮なことはしないが、そのことは高校3年生、18年間も生きてる僕には容易く気づくことのできることだ。心の中で規制反対派の人たちはロボット化が実現したら後のすばらしい世界について半ば夢心地にその様子の空想に浸っているだろうし、規制賛成派は、それが実現した、とても恐ろしい世界に対して恐怖心や怒りの感情に突き動かされて規制賛成の根拠を積み上げているだろう。それくらいこれは大ごとだ。規制が無くなれば、いいか悪いかは別として私たちの生活が180度かわる革新的なことだ。

 僕自身が、規制に賛成か反対か? それは何度となく心の中で考えたことだろう。規制には賛成だ。規制が無くなった後で、どういうことをやりたいとかロボット化で何ができるようになるとかそういうことを全く考えてないという時点で、僕は規制反対でない。ただ規制をしなければならない明確な根拠をあげろと言われても何一つ挙げられない時点で、僕は論理的思考を働かせたゆえでの規制を賛成しているわけでもない。ただ、今のルールが続いてくれれば楽だなと思うだけ。ロボット化とかバカだろ。そんな代物扱えるわけないし、ロボット化のシステムを勉強するとか時間の無駄。議論もそんなところに落ち着いて、僕は明日の学校のために、ベッドに入り部屋の明かりを消した。

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