第137話 店長交代
日の出屋のクマは、使い物にならなかった。
事務所には、ホワイトボードに配送メンバーの顔写真と名前が書いてある。ルート別に誰がどのコースへ行くのか一目で分かる様になっている。それをクマは、将棋の駒じゃあるまいしと言い非難した。
盛り付け現場に入る時、もっとパートさんを使い切る様に指導した時、何を思ったのかやたらと僕に指示を出すのでカチンと来た。
事務所へ呼びつけ「お前何様のつもりで俺に指示を出すのだ。俺には他にやらなければならない事が山ほどあるのだ。仕事の進め方が分からないならメンバー外すぞ」そう言うとクマを現場に戻した。
親父の葬儀の時、クマが休んだ恨みが残っていた。
クマの次の店長候補は僕の頭の中にあった。
原口だ。原口は、日の出屋の落ちこぼれだ。
独身で、夜遊びし放題で兄から何度となく解雇宣告を受けていた。明け方まで遊び電話すると「すいません、今渋谷にいて仕事に間に合いません」などと言う事はザラだ。
しかし、配達をやらせると天下逸品で才能はクマよりある。僕は、鍛えれば化けると目を付けていた。
しかし、いつも煮え切らないで傍観者の原口に、雨の中僕はずぶ濡れになり怒鳴り飛ばしていた。
「お前は馬鹿なのだ!日の出屋でやる気が無いなら今すぐ辞めろ。クマに負けて悔しくないのか!やるか辞めるかはっきりしろ馬鹿!」
僕は馬鹿を連発した。
しばらくすると原口が「何でもやります。鍛えて下さい」と言って来た。結婚して子供が出来ると言う。
兄と打ち合わせ、クマを降格して原口を店長にした。この人事は成功した。
原口は、目の色を変え仕事に打ち込んだ。クマは納得いかないと抗議した。もうついていけないと言いクマは自主退職した。
退職したクマはその後三回、日の出屋に戻りたいと面接に来た。他で働いても日の出屋にいた時の様にお金が稼げないのだ。
僕はクマに向かい「日の出屋は厳しいぞ。お前に耐えられるのか?」それにクマは答えられなかった。
やっぱり止めますと言い帰ってしまった。
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