第119話 派閥

 クマは店長失格だった。


 配送メンバーは、クマを馬鹿にして言う事を聞かない。配送メンバーに派閥の様なモノが出来ていた。


 その中に田辺がいた。田辺とつるんでいるのは前野と小坂だった。田辺はクマをいつも小馬鹿にしていて給料が安いとか、仕事がきついとか、毎日愚痴をこぼしていた。


 僕がある時、仕事を終え家に一人で夕食を取りながら酒を飲んでいると、兄から連絡が入り「田辺が日の出屋は俺たちがいなくなれば困るだろう。ストライキでもやって賃上げしてもらおう。と言いまわっているらしい。今日も何人か集まっているようなので注意してくれ」と言って、電話を切った。


 時間は午後五時。丁度飲み始めている時間だ。


 僕は田辺に電話した。田辺が出ると、待っていましたと言う感じで「なんですか?俺の事怖いの?」と聞く。


 僕に怒りのスイッチが入った。


 「お前など怖くない。お前などについていく馬鹿なメンバーは一人もいない。お前の様な汚い男は日の出屋には要らない。クビにするから明日から来なくていい。そこには誰がいるんだ?」


 田辺は前野と小坂の名をあげた。


 僕は「お前が言う全員とは二人以外に誰がいるんだ。お前が日の出屋を辞めて、お前についていくメリットがあるのか?お前が面倒見るのか?」


 その問いに田辺が「じゃあやってやるよ!明日覚えておけよ」そう言うと電話を切った。


 僕はその後、主要なメンバーに電話して田辺を解雇する事を伝えた。


 翌日、兄と事務所にいると田辺を先頭に、前野、小坂と続いて入ってきた。 


 「お前など必要ない」と僕に言われたのがかなり効いたようだ。兄が前野と小坂に「何でお前達まで辞めるんだ」と言われ「すみません。成り行きで」と答えた。


 万年人手不足の配送チームに三人の脱落者は厳しい。しかし腐ったミカンは、取り除かなければ全て腐ってしまう。


 早く対処して正解だと思う。他のメンバーは残ってくれた。


 感謝の気持ちで一杯だ。

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