第115話 店長の重責
日の出屋の配送メンバーは、個性派揃いでまとめるのが大変だ。
店長は、大塚に勉強だと言って経験させていた。僕が大塚を推薦して兄が許可した。大塚は、店長になると人が変わった様にぞんざいになり、僕にも反抗的な態度を取り、何度も話し合いを持ち粘り強く教育していた。
大塚は、結婚して一人子供がいる。配送メンバーのひろ子に手を出し不倫していた。僕達幹部の会議での話がひろ子に筒抜けだった。
僕が横浜で工場を立ち上げ営業したいと、夢を語るとその話を大塚はひろ子に伝え「横浜の工場は俺がやる。その時はひろ子もついて来て欲しい。一緒に頑張ろう」と話した。
日の出屋に、横浜で工場を作る計画など無い。配送メンバーの間で横浜に日の出屋が進出すると噂が流れた。発信源はひろ子だった。誰が噂の元か、メンバー内で聞き合うがらちが明かない。
兄にこの話が届き、僕に身に覚えないか聞いて来た。身に覚えある!大塚に話した事を思い出した。大塚に問いただすと「横浜の話し嘘ですか?」と開き直って来た。僕は、幹部内の話は口外しないように注意して終わりにした。
配送チームで懇親会を行った時、事件が起きた。
日の出屋では、部署別に定期的な懇親会をしていた。兄と経理の松木も参加する大切な行事だ。
二次会でカラオケになりかなり盛り上がっていた。大塚が、ひろ子の肩を抱き離さないでべったりでいた。
僕が配送メンバーにお酌して回る様に促した。その時、大塚が僕に向かい「うるせえよ!そんな事お前がやれよ!」と言った。
僕の隣には兄と松木が座り聞いている。僕は、盛り上がっている場を壊したく無くてグッと堪えた。周りはみんなアルバイトだ。明日会社で注意すれば済む事だ。
こんな雑魚、いつでもクビに出来るからと自分に言い聞かせた。二次会が終わり解散した。
兄と松木の三人で反省会の為三次会をした。話は大塚の態度を批判する事に集中した。兄は聞いていて怒りで手が震えていたと言う。店長の職を解き、平社員に降格する事に決まった。
僕はこの時、取締役営業部長まで昇格していた。
翌日、僕と大塚を含む四人の幹部が兄に呼ばれ応接室で怒鳴られた。
幹部以上になると、いかに飲み会であろうと無礼講は無い。懇親会とは、現場で下働きをして頂いている人達に楽しんでもらう場で僕達幹部は、ホストに徹しなくてはならない。
それを大塚に伝え、店長解任を言い渡した。
兄が「後は部長と話して今後を決めろ」と言い、大塚と僕を残しみんな退席した。僕が口を開いた。
「お前の今までの無礼講は、全てお前の未熟さから来ているものとして許してやる。日の出屋を辞めろとは言わない。俺の下で営業をやれ。営業をやれば調理、事務所、配送から洗い場まで全て関わる人達に対して感謝の心が芽生えるだろう。お前には嫁さんと子供がいるだろう。同僚の女に夢中になっている場合じゃない。家族を大事にしろよ。家に帰りよく子供の顔を見て考えろ。つまらないメンツは捨てろ」
大塚は、分かりましたと言い帰った。翌日、大塚が僕の所に来て
「日の出屋を辞めます。子供の顔を見て決めました。お世話になりました」と言うと立ち去った。
なんて軽率な男なのだと落胆した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます