第70話 業界の裏話
鷹の羽をオープンして、一年が経とうとしていた。
先ずは兄に相談した。蒲田駅近くに、大吉という焼き鳥屋がある。僕のお気に入りの店だ。そこで兄と二人で飲んだ。
鷹の羽を、オープンする時に決めていた事が幾つかある。
親父がやっていた、賞味期限切れの物は廃棄して絶対に使用しない事。これは当たり前の事だが、給食弁当屋でこの当たり前が出来ていない店が多かった。
ある給食弁当屋には、臭いを嗅ぐ係りがいるという。
例えば、シューマイを入れるとしよう。初日は素のまま入れる。回収された弁当の残飯を取り分け、残ったシューマイを嗅ぎながら集める。二日目には、それを天ぷらにして揚げて弁当に入れる。また回収された弁当を、取り分け残ったシューマイを嗅ぎながら集める。そして最後三日目に、もやしなどを加え中華風の料理に早変わりだ。
嘘だと思うかも知れないが実話だ。
賞味期限切れの商品を、専門に扱う業者もいた。
肉やハムなどの他に、闇ルートで流れて来た賞味期限切れの商品を扱っていた。大手の弁当屋の名前を出し「あそこであるだけ買うと言われた」などと自慢げに話していた。
冷凍食品も、一本五十円するえびフライが十円で買えた。物は凄く良い。僕も、喉から手が出る程欲しかったが使わなかった。
その賞味期限切れの商品を、使用している給食弁当屋が安売りしているのを見ると腹がたった。何も知らないお客さんは、安いと言い喜んで食べる。
全く狂ってる。
後は僕の理想だ。
働いてくれる人達に、十円でも多くお給料を支払う事。
皆勤賞も払えない男が、何言っているのだと笑われてしまうだろう。僕には経営者の資質が無い。
兄にもう一度、日の出屋で一緒にやろうと言った。
「昇がやりたいなら俺は構わない」
結局、焼き鳥屋で三時間飲んでいた。
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