第11話8位VS16位
手加減。この女は今そう言ったのかと、自身の耳を疑った
あくまで新たに憑依する肉体になると思いヴォルガ・クラリスの願いを聞き入れスカル・デスギアをこの学院の教師になる事を許した
だがただの社会不適合者だと思っていた女が憑依の真実に気がつくまでに感が良く、さらにはこの体に勝てると思ってるらしい
確かに魔法序列が戦闘力に直結するわけではないが順位が高ければそれだけ魔法の練度が高いという事だ。人類で8番目の天才魔法研究家に16位の社会不適合者が勝てるとは思えない
「どこからその自身が来るかは分からないけど……お手並み拝見と行きましょう【
【
位としては最上級の1つ下の準最上級魔法に位置している。並みの魔法師では習得出来ず、出来たとしても相当な訓練が必要になるが
「数多すぎだろ…!」
エルミシアが放った数は少なくとも50は超える。ただでさえ狭いこの空間で避け切る事は無謀と言っていいだろう
(回避は不可能。被弾すれば即死。防御を張ってもこの女は【
だがエルミシアに憑依してる人物の思惑は大きく外れた
「まぁ…どれだけ多くても放出系なら関係ないけどな」
スカルに着弾する瞬間、魔力の弾が消滅した。その現象は次々と【
「どういうこと…?」
どういう理屈で魔法が消されたのか全く分からない。体は天才魔法研究家だから体が使える魔法は使えるが中身は別人だ。エルミシアならどんな現象か分かったかもしれないが憑依してる者には理解出来なかった
(いや、理屈はいい。さっきこいつは放出系なら関係ないと言った。つまり魔力の体の中だけで処理した魔法なら問題ないということだ)
「【
この世でエルミシアしか使えない固有魔法【
この固有魔法を発動したエルミシアはもはや人間では相手にならず魔物とさえも正面から殴り合えるほどのスペックになる
(こんな高度な魔法を使うと憑依が維持出来なくなる可能性があるけど、もうただの魔力量の少ない女だとは思わない。紛れもなく人類において16番目に魔法が使える元軍人。そう思って戦うべき)
「それって理事長の固有魔…おっと」
エルミシアが轟音を鳴り響かせながら床を蹴り、スカルに殴りかかるがスカルは紙一重で回避する
(この状態でも避けるか……この魔法は【
「こんなに近づいて良かったのか?」
エルミシアの攻撃を回避したスカルの拳がいつの間にか視界を埋め尽くすまでに接近していた
「なっ!がぁっ!」
驚嘆を口にした後、悲鳴と共に吹き飛び鈍い音を立てて壁に激突する
(肉体強度が上昇してるこの肉体に、ただのパンチでこんなダメージ……あり得ない…憑依が…維持しないと)
なんとか意識を保ち憑依を維持しようと魔力を体に巡らせたが
「さっさと出て行けクソ野郎が」
「…かはっ!」
即座に壁際まで移動したスカルの拳がエルミシアの腹部にめり込む
(強すぎる………魔法序列16位?…そんな事関係ない…こいつは紛れもなく…人類最強に最も近い存在。逃げることに専念しないと…)
「さっきまで強気だった癖に卑怯だな」
「はぁ…はぁ……さすがに気がつくよねぇ。そうよ、私に手を出そうとすればこの女の体を内側から魔力でぶち破る。大人しくして……早く私から離れろ…」
スカルは指示通りに反対の壁際まで移動する
「本当だったら、このままこの体もろとも貴方を殺すところだけど……貴方の実力が不確定だから見逃してあ……あ?」
言葉を続ける事が出来ない。それもそうだろう……気がつく事も許されずにエルミシアは顔をスカルに鷲掴みにされていた
「黙れ三流魔法師が……どうやって理事長に憑依したかは知らないが、こんな初歩的な手に引っかかるなんて雑魚としか思えねぇよ」
(どうやって!反応も出来ななんて…この体は知覚能力も上がって…)
スカルはエルミシアの驚愕の表情に気がついたようだ
「どうやって……って顔してるな?教えてやるよ。お前は最初から魔法を発動出来てなかったんだよ。ここは魔力の通さない金属で作られた閉鎖空間……そんな場所だったら放出系だろうが内包系だろうが私には関係ない、ここで私以外は魔法は使えない。最初の【
(相手の魔法を阻害する?……そんなの聞いたことない…いや、それ以前に私は確かに体を強化したのに)
「この空間はいいな。魔力が外に出て拡散して行かないから随分と他人の魔力を乱しやすい。あとお前が馬鹿で助かったぜ…戦闘に入った時から暗示の魔法にかかってるのに気がつかなくてありがとよ」
(早く……魔力爆発を!)
「させねぇよ……消え失せろ【
エルミシアに憑依していた人物の気配が消え、エルミシアの体はその場に倒れこむ
「思いのほか楽だったな。この空間、馬鹿な敵、そんだけ好条件なら楽なのは当然か……とりあえず理事長を治癒しないとな。手加減は出来たと思うけど、早く起きてもらわないとここから出られないし…」
(まぁ……中身があんな奴じゃなくて本当の理事長だったら魔法による暗示なんて効かないだろうし、そもそも私の妨害の上から魔法を発動してくる可能性もあったな…)
人類の上位者同士の戦いはなんとも呆気なく終わるのだった
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