学院に迫る影

第8話召喚成功。乱暴メイド?

「あーマジで……なんでこんな事になっちまったんだ……」


先日、いきなりクラス担任という仕事を任された事にスカルは嘆いていた


「昨日もご説明しましたけど、理事長のお達しでして……」


不満を隠す気もないスカルをどうにかなだめようとするケイ


(あんのクソババア……私が嫌がると思ってわざとやってんじゃないだろうな……)


「ほら、あと少しで教室ですから覚悟を決めてください!担任の先生なんですから!」


廊下を歩くスカルの足取りは重い


「担任になったらお給料も上がりますよ!」


「本当ですか!?」


ケイの言葉にスカルは急に食いつく


「え、えぇ…理事長はそう言ってましたよ」


(最近、師匠がお小遣いくれねぇから研究費がやばかったんだよなぁ……魔法研究も安くねぇし、仕方ない!担任やるか!)


「ケイ先生!なにぼさっとしてるんですか!早く教室に行きますよ!」


「え?……あ、はい!行きましょう!」


態度を急変させたスカルにケイは疑問を抱きつつも、やる気を見せた事に安堵していた


◇◇◇


「よし、お前ら全員いるなー?…今日からA組の担任になりました。もう紹介はいらないと思うけど、スカル・デスギアだ。よろしく……てわけで後はよろしくお願いします、ケイ先生」


テキトーな自己紹介だけ済ませて、スカルは机に突っ伏してダラダラし始める


「あ、あはは……今までとあまり変わりませんが、連絡事項は私が皆さんに伝えますね。今日は魔法陣基礎のエレミード先生が出張でいないので、魔法陣基礎はスカル先生が担当します。あとは特にありませんね、以上です」


「ケイ先生……私それ聞いてないんですけど…」


「理事長が、魔法関連の授業で空きが出来たらスカル先生に代役させろと……」


(あんのクソババアぁあ!マジふざっけんなよ!わざとやってんだろ!?私にわざと伝えてないよな!?な!?)


「先生が魔法陣基礎の授業を担当するのか、期待してるぜ」


レッドの言葉にクラス全員が追従するように期待の眼差しをスカルに向ける


(おいおい……そこらへんの教師に知識で負けるとは思わねぇけど、魔法陣は専門外だぞ…)


「……まぁ、やるだけやってみるか……」


(アレ見せてやればこいつらも満足するだろ)


◇◇◇


「また遅刻か?」


カイトは教室の机の上で頬杖をつきながら呟いた


「先生ってばテキトーだもんねー」


(エルザ、テキトーって点はお前も大概だと思うぞ)


魔法陣基礎の授業の時間になったが、未だにスカルは現れない


(まぁ、この程度じゃもうみんな驚きもしないけど)


その時、教室の扉が開かれる


「……魔法陣基礎って訓練場でやるんじゃないのか?まさか座学?」


入ってきたのはスカルだ。訓練用の服を着た


「先生、魔法陣基礎は魔法陣に関する知識を身につける授業。基本は座学だ」


スカルの問いにレッドが答えると、スカルは驚愕する


「おい、お前ら本気で言ってんのか?……だって…座学で何やんの?」


「書き取りとか……基礎陣形の種類とか?」


生徒の言葉にスカルは絶句する


「おい!お前ら、今すぐ着替えて訓練場に来い!魔法陣基礎で魔法陣を実際に使わないとかアホだろ」


(この学校の教育はどうなってんだ……?ただでさえ半年の間魔法自体には触れてないってのに、さらには書き取り?バカか…そんなんで一流の魔法師が育つか)


あとで絶対に理事長に文句言ってやろうと思いながら、スカルは訓練場へと向かう


◇◇◇


「と言うわけで、お前らが教室でボケっとしてる間に私がここに魔法陣を描いておきました」


スカルの足元には直径で3mほどの魔法陣が特殊な塗料で描かれていた


「多分、お前らは魔法陣基礎の授業も2〜3回くらいしか受けてないと思うから分からないだろうけど、ただ魔法を使うだけなら魔法陣ってのは本当は必要ありません」


その発言に、生徒たちは様々な反応を示す。疑問を浮かべるもの、驚愕するもの、憤慨するもの


「じゃあ、なんで魔法陣基礎なんて授業があんだよ!」


生徒の1人が、スカルに向かって発言する。確かに、必要のない技術ならば勉強する必要などないだろう


「あーはいはい、言い方が悪かったな。詳しく言うと、熟練した魔法師なら魔法陣無しでも魔法を使えるから成長の度合いによっては要らないって意味だ……では、何故魔法陣という技術が授業とカリキュラムに組まれていると思う?」


魔法の発動を補助する為のものだとしたら、必要なのは初心者のうちだけ。むしろ魔法陣に頼りすぎると普通に魔法を発動することが出来なくなる可能性もごく稀だがある。そんなリスクを背負ってまで魔法陣を使用するのか


「先生が昨日使ってただろ?相手に気がつかれないようにしたり、魔力の消費を抑えたり……って事じゃないか?」


「流石は5桁の魔法師、まぁ50点かな。レッドの言う通り、魔法を設置出来たり、魔力の消費を抑えたり、様々な使い道がある。だが、それだけでカリキュラムには入らない。だってあらかじめ魔法陣が描かれたスクロールとか使えば別に自分で描けなくても問題ないし」


確かに、レッドが提示したメリットは正しい。だが魔法陣基礎が何故、授業のカリキュラムに組まれているかの回答にはなり得なかった


「魔法陣にしか出来ないことがあるからだ。それは召喚って言ってな、聞いたことあるだろ?召喚師サモナー。あいつらはこの世界のどこかにいる生物とか、もしくは別世界の生物を魔法陣の上に呼び出す技術を使う。それが召喚……召喚師サモナーになるには才能と特別な訓練が必要だが、簡単な召喚だったら魔法が使える奴なら誰でも出来る」


「じゃあこの床に描かれてる魔法陣って……」


「察しがいいなカイト、そんじゃあ私が契約してる精霊を召喚するぞー」


スカルの周囲に魔力が満ちる


「我、其の世界と此の世界を繋ぐ者」

「汝、我が呼びかけに応えて現界せよ」

「我が名はスカル・デスギア」

「汝の名はゼクス」


詠唱によって地面に描かれた魔法陣が輝き、とてつもない光量が訓練場を埋め尽くす


そして光が収まると……


「ご主人様!また召喚を横着しましたね!何ヶ月ぶりですか!?私はいつもご主人様にご忠告申し上げたではありませんか!今日という今日は許しませんよ!」


メイド服を着た透明感のある女性が


「お、おい!やめろやめろ!私が悪かったから降ろせ!」


スカルの胸ぐらを掴んで持ち上げていた



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