第24話 再会

アルベルトの手紙から丁度1年が経っていた。


あの後、ルービィア王国で革命があった。

何でも、国王と第1王子の罪が暴かれ、処刑されると同時に第3王子がその玉座に着いたらしい。

今まで姿形だけでなく、存在さえも隠されていた、第2第3王子の事は少なからず世界を心頭させた。

一時期、社交界はその話題でもちきりだったのは記憶に新しい。

それに加え、第2王子が姿を消したとか、消していないとか、などと根も葉もない噂が飛び交っていた。


春の訪れを告げる鳥がヒュールルと鳴いている。

シェルナリアは16から17へと成長し、大人になった。

マーティン宰相には常々18歳になったら、絶対に結婚させますからね、と念を押されている。

そのため、アルベルトを待てるのはもう1年も無くなっていた。

アルベルトは16になったら迎えに来ると言っていた。

私は当時16だったから、アルベルトが16になったらだと考えていたが、もしかしたら違うのかもしれないと不安になっていた。

コンコン、と扉を叩く音がした。

どうぞ、と声をかけるとマーティン宰相が入ってきた。


「女王陛下、あなたへ素晴らしい縁談が来ておりますぞ。なんでも、ルービィア王国の第2王子からです」


やっぱりね、と私は思った。

第2王子が消えたのは噂だったのだ。


「お断りを入れて」


「よろしいのですか?」


珍しくマーティン宰相が食い下がらない。


「何が言いたいの」


「第2王子アルベルト様からですよ?」


マーティン宰相の言葉はにわかには信じられない。

でも、それとなく予想していたことでもあった。

国がどうとか書いていたから。


「本当によろしいのですね?」


私が中々返事をしないからか、念を押すように聞いてくる。

私は迷っていた。

頭には待っていろ、という言葉が浮かんだ。


「やっぱり受けるわ、その縁談」


ふっと笑い、マーティン宰相は


「では、薔薇園でお待ち下さい」


と言った。


「いいえ。迎えにいくわ」


「それでこそ、シェルナリア女王です」


マーティン宰相は満足そうに笑った。

私は応接間へ歩き出した。

扉に手をかけたところで、マーティン宰相が爆弾を落とした。




「お子は最低でも2人は欲しいですね」


私は何も返さず、足を進めた。



応接間に着くと、護衛を下がらせ、手を取っ手にかけたは良いが、心の準備が出来ず開けられないでいた。

思いきって開けようと押したら、思っていたよりも強い力で扉が引かれた。

腕をぐいっと捕まれ、中に引きずり込まれる。

背中の方で扉の閉まる音が聞こえた。

顔をあげると、少し大人になったアルベルトの姿があった。

1年前よりも伸びた身長が、あの頃より成長していることを実感させた。


「アルベルト、待ってたわ」


アルベルトは顔を綻ばせて、ありがとうと言った。

強く抱き締めてくるから、私も戸惑いながらその大きな背中に腕を回した。

いつまでそうしていただろうか。

唐突にアルベルトが私を離し、ソファーに座るよう促して来た。


「待たせてごめん」


言いながらアルベルトも隣に腰を下ろした。


「本当よ。手紙で伝えるなんて卑怯よ。で?話してくれるんでしょう?全部」


「ああ、話すよ」


「あなたって、怪盗の時と言葉遣いが違うわよね」


ふと、思って口に出したのは脈絡のない話だった。


「仕方ないだろ?シェリーに大人だと思われたかったから」


「無理よ。あなた私より年下じゃない」


「アル。アルって呼んで」


「わがままね」


「年下だから」


そこまで言って、アルベルトは顔つきを変えた。


「シェリーには聞いてほしい。俺の人生を」






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