運命の鐘
カゲトモ
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リンゴーン。
澄んだ空に鐘の音が響いた。今日は近所のチャペルでイベントをしているらしい。知ったのは今さっきの事だ。そういえば告知のポスターを駅でも見た気がする。
『チャペルの中心で愛を叫ぶ』
美しく蔦を纏うレンガ造りの塀にイベントのポスターが掛けられてあった。そこにはそんな文句が書かれてある。安直では? と思いつつも、つい足を止めてしまった。
いい夫婦の日の次の日だから? 今日は勤労感謝の日なのに? と突っ込みつつ、ポスターに目を凝らす。
『チャペルの中心で愛を叫ぶ
愛する人に、愛を伝えてみませんか?
いつもの感謝を、本当の気持ちを、愛の言葉を。運命の鐘を鳴らして、想いをあの人に届けませんか?』
このチャペルには“運命の鐘”と名付けられた鐘があって、その鐘を鳴らすことで神様に結婚のお知らせや永遠の愛を誓ったりするらしい。なんともロマンチックな。
と独り身がボヤいていても、塀の中から歓声が聞こえるのは事実。コートのポケットに両手を突っ込みながら門まで移動した。
・・・すごいな。
そこには予想以上の人数が集まっていた。よく見ると、チャペチュー(略してみたけど、なんか違う意味みたい)以外にも何かやっているみたいで、ガーデンウエディングも出来る広い芝生のスペースにはいくつものテントが張られてあった。フリーマーケットや出張カフェなんかもやっているらしい。
これなら独り身でも問題なさそうだな、なんて一歩足を踏み出す。場違いだとしても、俺はカフェが覗きたいだけだし、なんて言い訳誰も聞いてないってな。
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