3-12
「で、どうしてこんな無茶な任務を引き受けたんです?奥様。」
手にしたカンテラの照明を絞り、先行するアリアの夜目を頼りに進みながらヘラレスは愚痴が聞こえるよう大きな声でこぼす。
「もちろん報酬が魅力的だからよ!」
アリアがあまりにもキッパリといったので、ヘラレスは慌てた。
「あ、アリア様!!」
呼称を間違えたヘラレスを別段に叱る事も無くアリアはつづけた。
「
「だけど魔術師と
アリアは自身に満ちてそう言い切った、だが溜息をついてつづける。
「私達は半端者なのよ、まだ、有名を馳せるほど凄い力があるわけじゃない、だからと言って平均的な軍略に組み込むにしても能力はバラバラで、練兵する時間も無いは、使いづらいって訳。だとすれば独立遊軍として使う手は別に可笑しくはないわ。」
「私も同じくそう、成功ははなから考えていないは、ヘラレス!まず第一にする事は危なくなる前に逃げる事よ!」
ヘラレスにはアリアの考えが読めない。
「ならばなぜ危険に赴こうとされるのです。」
ヘラレスの質問にアリアは答えた。
「相手の立場になって考えてみて、敵の壁に穴を開けました。これが先の状況よ、いいわね?」
「はい奥様、、、」
ヘラレスの相槌にアリアはつづける。
「通常であればここから敵が怒涛の勢いで流れ込んでくるは、そうでないなら砦を完全破壊して撤退するは、侵攻するほどの兵力も無いのに、壁の厚さだけ突出しても、敵に挟みこまれ袋叩きに会うだけだからよ。」
「ではヘラレスさん、以上を踏まえた上での調査隊消息不明の原因は何?」
ヘラレスは急に話を振られて返答に慌てる、しばらく黙って考え込んだ。
「、、、敵は退却せずに待ち構えている、、、それと鉢合わせて敗れたと言う事ですか?ですが挟撃される危険を冒してなぜ?」
闇を見据える目に皺を寄せ、アリアはつぶやいた。
「これは戦術でも軍略でもない、単なる目立ちたがり屋の実力行使、力のアピールみたいなモノだからよ。」
「デーン将軍の部隊は騎馬や魔獣、
ヘラレスは泣き顔で意見具申した。
「そ、そんな敵、もし見つかったら私達も逃げられ無いじゃないですか!!」
ヘラレスはしばらくアリアの反応を待ったが、これまでの返事の感覚からはずいぶんと押し黙ったままなので、不安でたまらなくなった。だがしばらくしてアリア隣を一緒に歩くレティシアに話を向ける。
「ねえ、貴方は今の状況をどう考える?私が今言った事を踏まえた上で、何を考えて勝機を見出しているか解るかしら?」
話を振られたレティシアはしばらく考えた後に、暗い表情をアリアに向けた。
「まさか、、、」
アリアはニッコリ笑う。
「そう、でもそれが一番危険が少なく最も確実な方法よ、そしてどの郎党も持っていない、私達の一番の武器ね!」
「もちろん強制はしない、貴方は私の郎党じゃないからサールと相談して決めて。ただここで砦指令の依頼を達成すれば、それだけでお金と信頼を得ることができるは、初めの一歩だけど、荷役で地道に信頼を稼ぐより早い。そしてこの手は私達、いや、貴方にしか使えないの。」
そうアリアに言われレティシアは押し黙る。
「ヘラレス、サールも、もう少ししたら休憩しましょう。別に無理をする必要はないの、作戦はきっと驚くような、そしてあなたたちも納得がいくよう内容を考えてあるわ。」
ヘラレス達コーボルトは顔を見合わせる、サールは押し黙ったまま承諾の意思を示した。
アリアは郎党全員に笑みを向けた、、、だが程なくしてアリアは老コーボルトへ文句を言う。
「ね、貴方達。そんなに離れなくったっていいでしょ!乙女に失礼よ!!」
アリアの言葉に、後ろを離れて歩くヘラレス達コーボルトは顔を見合わせる、そして溜息をつきながらヘラレスはアリアに答えた。
「恐れ入りますが奥様、しばらくはご勘弁ください。その匂いは私達にはキツ過ぎるのです。」
砦の居室で
「はしたない淑女だな、風呂の備品に手を付けただろう?」
アリアはとっさになんと返答するか窮したが、
「まあいい、それは犬除けの香油だ。特に問題ないが慣れてないコーボルトには嫌がられるぞ、せいぜい部下達に迷惑を掛けないようにするんだな。」
アリアは絶句した。
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