鬼斬り

八握(やつか)

あるページ

偃月えんげつの国。

広大な盆地にあるこの国の周りは山で囲われていることにより、他国に攻められることがない。そんな環境で育ったからなのか、国民のほとんどが穏やかな性格である。治安も良く、商人や旅人からの評判も良い。

ただ一つ、この国には問題があった。

それが、《鬼》の存在である。人の形をとり、額に角を生やした人ならざるもの。これらが我々人間を襲うのである。かつては、これに対抗する手立てが何も無かったが、技術の進化により、鬼は水蜜桃すいみつとう軍によって少しづつ減滅されている。

この国には2つの国の軍がある。国防を担う斎王軍と鬼を討つ水蜜桃軍。

しかし、斎王軍は国民性ゆえ白刃戦を苦手とする。戦争をしたことが無いというのもその理由かもしれない。

一方、水蜜桃軍は常に山の付近の村や街に滞在し、鬼の討伐を一人週に一回する。帝は国防より、この仕事を優先しているため、宿舎の設備や訓練場はこちらの方が整っている。

戦争を知らないこの国の民は、他国への恐怖も知らない。

私はそんな国に生まれた齢17の少年であり、水蜜桃軍への入隊を志している。名はローリエという。

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