Dream to real

かーくω

第1話 目覚め

「おはようございます」


突如聞こえた、可愛らしい女の子の声に僕は目覚めた。

そっと目を開けると、小学生か中学生くらいの背の小さな女の子が僕を見上げていた。


「…おはよう…ございます」


見知らぬ風景漂う草原の道端に、女の子と僕二人。

これを見られてしまえば、僕は犯罪者に間違われてしまうのでは…。

初めて味わう感覚に戸惑う。


「何を考えているの?そんなに汗ばんで」


僕は、いつの間にか服を濡らすほど汗を掻いていた。


「何でもない…」


僕は思わず隠した。

女の子は、「あっ、そう」と、言わんばかりに顔に出ている。

表情が豊かな女の子だ。


「ここは、貴方が本来住む世界とは異なった世界です。しかし、この世界は貴方の世界と繋がっていますので、時間の進みが一緒です。この世界で暮らすのも、元に帰るのも自由ですが、帰るためには条件があります。しかし、その条件は公表されていませんので、帰る選択肢をされるのなら条件を探し、達成してください。解りましたか?」


女の子は、顔色1つ変えず僕を見つめ、説明をした。


「理屈は…うん。この世界は二人だけなの?」


見渡す限り、人影も見えない。

草原が広まってるだけだ。


「いいえ、貴方の家族、友達や知人…貴方達人類全てが、ここに存在します。命も意識もありますのでご心配には及びません」


「命もって…?まさか、ここで死んだら…?」


「貴方の人生は終了となります」


「だよな…、そういうこと…だよな…」


新たな人生の始まりであり、終わりなのかも知れない…。


「では、貴方に導きの光を与えます」


女の子は、右手を俺の胸に触れた。

その瞬間、何かを感じた。


「さあ、これを」


女の子は何かを渡してきた。

指輪…?


「これって…?」


「これから貴方を導く鍵です。決して結婚指輪とかでは御座いませんのでご安心ください。それでは…」


そして、彼女は消えた。

とにかく人を探そう。


見渡す限り広がる草原を歩き始めた。

握る指輪を見ると、赤い宝石みたいなのがある。


…ん?

遠くから歩いてくる人の姿が見えた。


その姿がどんどん近づいてくる。

そして、その姿がはっきり見えた。


…その姿は酷く、見るに耐えない姿であった。

右腕は無く、傷だらけであった。


「ふん、見るに耐えないという顔をしてるな。気にするな」


心が読まれた!?

いや、違う。恐らく顔に出てしまっていたのだろう。


「すみません…」


「この先にアルフォン城という、大きな街がある。そこに行けば何か分かるだろう。無事に辿り着ければ…な。じゃあな」


男は、横切り歩き去っていく。

無事に辿り着ければって…何か嫌な感じがするな。


…あの傷…酷かったな。

男の血が、歩いた場を赤く染めていた。


アルフォン城…とにかくそこへ向かおう。

血を滴ながら歩いてきた男が付けた地を道標に。

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Dream to real かーくω @fenez

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