ラスト・ティーンズ

エジソン

第1話 ラスト・ナイト

ラスト・ナイト 1

ラスト・ティーンズ


世界は最後の戦争を迎えていた

この戦争で地図は白(アメリア)か黒(ロジア)に染まる


戦争が終われば戦闘機も銃もいらなくなる


アメリア帝国が作ったのは「使い捨てる兵器」だった


中央に台座の上がモニターになっている物が置かれた部屋に3人はいた。声は部屋にこもっており、この部屋が防音であることをうかがわせる。

ボイスチェンジャーを通して発せられている声が流れ、モニターの垂直上、何もない空間上にCG映像が映し出されている。

「以上!説明を終了する。集合時刻に遅れないように」

映像がぷつぅと音を立ててフェードアウトし、映像が途切れ、部屋が少し明るくなる。金髪で見た目がやんちゃそうという顔の背が高い男、レインが気の抜けた声を出した。

「ひぇ~説明終わったか~。なぁサンよぉ~俺達にこなせると思う?」

隣にいたサンと呼ばれる黒髪の青年は表情を変えずにそれに反応した。優しそうな顔つきであるが、肉体は引き締まっている。

「練習通り、うまくやるだけさ」

そして、無表情の美人の女性がレインの胸倉を軽く掴んでばかにした。黒髪ロングの細身である。

「心配過ぎよ。あんたはチャラチャラしてる癖に臆病で心配症ってネタにしかみえないわよ?」

サンが女性の肩に手を置き、

「そう言うなよクラウディア。レインの性格が俺達に注意を促し助けてくれるんだ。料理で言うと隠し味?スパイス?的な」

サンの特徴である的を得ているような、いないような例えを披露する。

「そりゃ、そうだけど...。レインを少しからかっただけだし。」

肩に手をかけられた女性、クラウディアはサンの方を向き、顔を少し赤らめ手を離す。ばつの悪そうにもじもじすると、ここぞとばかりにレインが反発する。

「おいおい言ってくれたじゃねーかクソ尼!お前はそんな性格だから誰かさんに意識してもらえないんじゃねーの?」

一瞬で無の表情に戻り、氷結の眼差しをレインに向ける

「やる気かしら?」

「おいおい、そこまでにしとけ。ミッションは明日だぞ。そんなことより早くお祝いをしようじゃないか」

そう言うとサンは出口に向かって歩き出す。追ってレイン、ムッと頬をぷくりとさせてクラウディアがついていく。

三人は食堂にいた。食堂といってもホテルのレストランの用な物静かで暖色を基調とした品格のある部屋だ。周囲には白衣を纏った科学者や黒色の軍用のベストを着用している者など年齢様々な関係者で賑わっている。四人掛けソファテーブル席にはサンとレインが隣り合い向かいにクラウディアが座っている。テーブル上のホールケーキに蝋燭が19本てたててあり、先端の炎が3人の顔を照らしている。

にやりと笑みを浮かべレインが言う

「我がパーティーを開始しよう!」

「俺達の誕生日パーティーな。誕生日おめでとう」

「おめでとう。あっという間の9年間だったわね」

レインはサンにつっこんでくれてありがとう的な頷きをした。


今日三人は19歳になった。偶然、たまたま誕生日が同じであった訳ではない。ただ同時に生み出されたからである。

アメリア帝国はロジア連邦と戦争中、世界周知の事実である。軍事境界線では両国が見張りを立て、警戒し、時には抗戦するということが長らく続いていた。しかし、サン達が生まれた19年前にアメリア第145代大統領が就任し、歴史は動いた。大統領の名はジャック。ジャック大統領は部下をコマのように使い、カードゲームをするかの如く淡々と遊技の様に仕事をすることから、通称トランプと呼ばれた。ジャック大統領は一癖も二癖も強いものの大統領としての仕事ぶり、実力だけは確かであり、ながらく停滞状況だった戦線を大いに押し上げ、世界統一まであと一歩と迫った。アメリア帝国の軍事力を持ってすれば早急にロジア連邦を手に入れることはできたであろうが、ジャック大統領はそれをしなかった。逆にロジアへの軍事的行動による被害を最小限に抑えようとしていた。

なぜなら、戦争に勝てば相手のそれらは自分の領地となるからだ。最小限の被害で手に入れ、最効率で復旧する。そうすれば戦争終了後の仕事ば楽に済む。超効率主義であるジャック大統領はそう考えていた。そこで工場地帯として盛んな東の島国の技術に目を付け、新兵器を誕生させた。

それがサン、レイン、クラウディアだった。

彼らは試験によって選出された優秀な子供達だった。科学者は12歳の彼らに手術を施し兵器として生まれ変わらせ、その際に不要な記憶はリセットした。こうして、サン・レイン・クラウディアは新しく自我が芽生えた9年前の今日を誕生日としている。


三人で蝋燭の火を吹き消し、ケーキを食べ始める。

「19歳とかまじ大人って感じだよな~。ミッション終わったら思い出作りってかなんかしたいな」

「あら、いいじゃない。レインの割にいい提案よ。何か考えでもあるの?」

「いや、そこまではまだ...。」

「所詮レインね」

髪をかきあげながら普段のやり取りを行う

「旅行とか...いいかもな。ロジアにもいけるのかな・・・?極近くの町も多いからオーロラも見れるだろうし、火が付くレベルの強いお酒があるらしいぞ。戦争後はのんびりしたいな」

「名案ね!さっすがサン!うんうんきっといけるわよ。てか絶対行く!お揃いのマフラー巻いたりしてね。ふふっ」

「俺たちの仕事によって戦争は終結するか。あー考えたら少し緊張してきた!重役任されたな」

サンは静かに笑い、そうだなと言ってうなづくと、ふと5人ほどの男がテーブルに近づいてくることに気が付く。食堂にいる周囲の人達もざわついているようだった。レインとクラウディアは気づいていないようだった。

「来年はもう20歳!成人よ!私達も大人になったものよね」

「おいおい、今日誕生日迎えたばっかりのにもう来年の誕生日の話かよ」

サンが近づいてくる人物を特定しようと目を凝らした次の瞬間、レインとクラウディアに伝えるのも忘れ、突然立ち上がり敬礼をした。

「お疲れ様です!」

はっ!と状況を理解し、遅れてレインとクラウディアが立ち上がり敬礼し、食堂全体が若干静かになる

4人のスーツ姿の男に囲まれた長身に白髪と金髪が混じった男は自分のペースで3人の席まで歩き、挨拶に返答や会釈っをせずただ3人を見下ろしてゆっくりと口を開いた。

「君たちが鬼人化の被検体か。私は大統領のジャックだ。」



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