思い付きで特に必要も無いのに勇者を呼んだら、大惨事になった件について

@Yomuhima

第1話

最初に感じたのは湿った埃臭さ

次に頬と手のひらの下、硬い地面にジャリジャリした土


ぼんやりと目をあけて、辺りを見渡せば、そこは玄室であった


納められた遺体は見当たらぬが、玄室で有ることは間違い、何故なら見覚えのある壁画に、出口が存在していない石の部屋、明かりは薄く輝く苔のような何か、長くどどまれば肺を駄目にしそうであるし、酸素の心配がある

壁画に見覚えが有るのは、見つけた古墳の管理が悪くせっかくの状態のよい染料がカビて剥がれ落たとニュースで見かけた事があったからだ

そう考えれば、腐り落ちた筈の壁画は綺麗だし、出口も空いてないのであれとは別かも知れないか


ペタペタと手探りで部屋を触り出口の手掛かりが無いか確めた


一通り確認して、分かったのは私の身長から計算して約3㍍の正方形の床、高さも同じだとしたら立方体の部屋になる、片面に天女の精密な絵が描かれているので、その反対側もしくは天井が部屋を建築する時に、最後に閉めた場所と推測した

天井には手が届かないので先ずは壁からもう一度念入りに調べる




どのくらい時間が過ぎたか分からないが、息が苦しい、どう調べても出口の手掛かりは見つからない。

喉が乾いた、こんなことなら、部屋の棲みに垂れ流した尿を服にでも染ませておくのだった



辛い、己の息の音しかしない

耳にたまに変な音が聞こえる


ここは何処なんだ

何故私がこんな目に

誰が 仕組んだ


ここから出たい

お腹へった


ごめんなさい

謝るから、ごめん悪かった


出して


あた ま いた ぃ


おな か へっ た


死 ぬ の


何で?



何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ

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なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ

なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ


なぜに、私だった


罪か

偶然か

必然か

悪意か

善意か


何故


怨むぞ

憎む

許さない

この理不尽の原因のみならず、私を救わずのうのうと生を謳歌する全てを憎む


皆死ねばいいのに



命が燃え尽きる寸前の大きな火花で、玄室に呼ばれた客人は憎しみを残した、被害者が幼子であれば?或いは最も年配で有れば、心優しき人間で有れば、この呪いは回避出来たかも知れないが、どちらにしても人知を越えた力をもつ勇者を呼び出し、死者の国たる玄室に閉じ込め殺した代償は高くついた。






絢爛豪華と言う言葉がぴったりな緋色と金色で彩られた部屋に、職業が皇帝意外に見えない圧力をもった見た目の女


居室に似合う赤と金のドレスの女が、午睡を貪るライオンの如くアシンメトリーのソファーで寛ぐ


この高貴な麗人のプライベートな部屋の様だ

その、足元に一人の男が深々と頭を垂れて声を張り上げている


その様をつまらなそうにあるいは酷薄な瞳で見下ろしながら扇子で手遊びをする


報告内容は召喚時に座標を間違え行方不明になった勇者の死亡が確認されたとの事だった。


その赤い唇が、女性にしては低く落ち着いた声を紡いだ


「分かった。差しあたっては次の勇者を呼べば良かろう?その為のコストは此度の責任の所在たるそちに用立てて貰う、新しい勇者を余の前に差し出した時に罪を許してやろう」

「はっ 寛大な処置感謝致します」

「よいよい、貴族家1つで集め直すのは骨が折れるだろうがせいぜいやり遂げよ」


勇者召喚に必要な呪物は多岐に渡りその、希少性から高価なだけではなく、揃えるのは金を積んでも難しいものが少なくない。


「全力で当たらせて頂きます

して、行方不明の勇者は如何致しましょう」


「探せ。時を刻む腕輪など珍品が有れば献上せよ。どうせ遺体には必要有るまい」


「畏まりました」

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