23-2.思いやりの交換
「クリスマス前ってさ、忙しなくてやだよね。ホームでもクリスマス会があるから飾り付けとかプレゼントとか準備しなくちゃで。喜んでもらえるのは嬉しいけど、忙しない」
「それね。年末年始の準備で忙しいのに余計なイベントが増えたカンジ、でやあっ」
「ナイスー。紗紀子さんネットプレー上手すぎ」
「ナオトくんが後ろでばっちりフォローしてくれるからだよ」
私たちはホテルのお部屋でゲームに勤しんでいた。マイクラもスプラトゥーンもやらない私は後ろで見てるよーって言ったのに、ナオトくんは一緒にテニスやりましょうって。
懐かしのファミコンのテニスは、ドット絵の不自然な動きとかピコピコな電子音とか、レトロでエモい。そして楽しい。
白いユニフォームのレベル3のペアを相手にストレート勝ちして、ヨッシャと缶ビールで祝杯。引き続きレベル4と対戦しますかって訊かれて、私はいいえと答えてベッドに仰向けになった。
ゲームって肩や背中がこるんだなあ。子どものころってどうだったかな、え、これって年のせい?
うーんと、目を閉じていると、ころんと隣にナオトくんもきた。
「紗紀子さんは何がほしい?」
「クリスマスプレゼントならいらないよ」
よいしょと横向きになってナオトくんと向き合う。
「付き合ったばかりだし、お互い忙しいのに無理することないし、今年はパスにしよ」
「今年は?」
妙なところに反応してナオトくんは嬉しそうにする。言葉のあやなんだけどな。
「でもそれじゃ味気ないからルールを決めない? クリスマスプレゼントってまわりの人に笑顔になってもらいたいって思いやりの交換でしょう?」
「賢者の贈り物だね」
「あれ、僕、思い出すだけで涙が出る」
目の前の瞳がほんとにうるうるしたから悪いけどふきだしてしまった。
「意外っていうか、ぽいっていうか」
「紗紀子さんわかってない」
腕が背中に回ってぎゅううって抱きすくめられる。お風呂に入ったばかりだから、シトラス系のボディソープの香りに肌の匂いがまじる。この匂いに安心できるのって大事だよなって私もぎゅって抱きしめ返す。
「ルールって?」
くぐもった声で尋ねると、ナオトくんは腕の力をゆるめてぐいっと私を覗き込んだ。
「二千円以内でプレゼントを用意して交換。何をもらっても文句なし。更新有無の判断には影響させない、どう?」
小学生のときにやったクリスマス会のプレゼント交換みたいだ。
クラス全員で持ち寄ったプレゼントをシャッフルして男女関係なく配ると、ハンドメイドのペン入れやお花のシュシュなんかに当たってしまった男子が当惑して、持ってきた当人を突き止め「いらないから」なんて突き返して、女子のブーイングを浴びていたなあ、そういえば。思い出してみるとあれはカオスな光景だった。
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