22-3.男もいろいろ

「それはそうといいの? ユウタくん。コウジくんは親友なのに」

「いや、親友じゃないですし。どうでもいいですし」

 そうなの!? ちょっとびっくり。理沙と順子と同じくいつも一緒のイメージだもん。だからこそ、すったもんだの末に両カップル成立ってなったのだろうし。


「職場が一緒だし遊ぶことも多いですけど。ぶっちゃけオレって利用されてるようなもんすよ。オレは専門卒で、向こうは大卒で、同期っていっても向こうのが年上なのに仕事のフォローだってオレがしてやる方だし。アイツPCの扱いがぜんぜんなんで。で、ぶっちゃけ今度部署も離れることになったし。付き合い切れたって痛くもかゆくもないっす」


 そーなんだー。男同士の付き合いもいろいろなんだなあ、と私はちょっとびっくり。順子と理沙もアンタそんなふうに思ってたの!? って顔してるし。


 うちらは女子高育ちで、いちばん難しい時期の男子がどういうふうに変化していくのかを目にしていない。私には弟がいるけど、あいつはヘンテコすぎて一般的なサンプルとはいえないし。

 男同士の付き合いがどんなものかはわからないし、それこそ世代の違いで、集団意識の強い暑苦しい付き合い方はしないのかも。おっさん社長さん集団みたいに持ちつ持たれつ仲良しこよしってわけじゃあないんだろうなあ。


「この際オレも便乗して言いたいこと言わせてもらいます」

 ちゃっかりしてんなーおい。

 苦笑いしているところに、由希ちゃんに蹴り飛ばされながらコウジが店から出てきた。

「はい、確保でーす」


 居並ぶメンツを見て目を丸くしたコウジは、次いで顔を歪めて回れ右しようとしたが、先回りしたユウタくんがそっと首を左右に振ると、観念したように口を引き結んだ。

 こういうとこだよな、と今更ながら実感する。


 静香がセッティングした合コンで彼らと知り合ったとき、私の好みだろうって絵美におススメされたけど、なんか違うと思った。ひょろっとした長身で色白の優しい顔立ちで、アイドルグループに居そうなイケメンで確かに私のタイプかもだけど。

 コウジって目はきれいだけど、口が歪んでいるのだ。口元に人間性が出ちゃってる。


 罵倒したいのをこらえているのか、理沙が顔を真っ赤にしている。ユウタくんがコウジの腕をがっちりつかみ、私たちはとりあえず外へと出た。

 予定通り理沙たちは、さっき私と由希ちゃんが入ろうとしていたカラオケ店に向かってる。クルマを停めてある立体駐車場の前で私は由希ちゃんの背中をつついた。


「一緒に行ってもしょうがないし。私、カラオケ気分じゃなくなっちゃったんだ。夜景とか星とか見に行きたいな」

 ワガママがすぎるなって思ったけど、由希ちゃんはにこっと笑って頷いてくれた。

「いいですよ。そこのコンビニでコーヒーと肉まん買っていきましょう」

「ありがと」


 コンビニエンスストアの灯りに向かって由希ちゃんと歩き出しながらビルとビルの隙間から黒い夜空を見上げてみる。

 オンナもオトコもカップルも女同士も男同士も。価値観はいろいろで付き合い方もいろいろで。そんなことをまた感じてしまった初冬の夜なのであった。

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