1-2.年下彼氏のいいところ
頑張ったけど待ち合わせの時間より少し遅れてしまった。
駅の改札前に小走りに辿り着くと、私の姿を見つけた祐介が見えない尻尾を振りながら駆け寄ってきた。
「ごめんね。待たせた」
「ぜんぜん。仕事は大丈夫だった?」
「楽勝」
にこにこと手を繋ぎいつもの居酒屋に移動する。
「生中ふたつ!」
何はともあれビールだビール。それと軟骨。
すぐさま運ばれてきた冷えたジョッキを打ち合わせて乾杯してから一気にあおる。
「んーっ。生きてて良かった」
「お疲れ様」
なんとも気の抜けるほわほわした笑顔で祐介が私の顔を見る。カワイイぜ、ちきしょう。
年下の可愛い彼氏に骨抜きってどうよ、と自分に突っ込みつつ、でも癒されるんだからしょうがない。
もともとは祐介の友だちが私の友だちをナンパしてセッティングされた合コンで、私たちは知り合った。
友人同士と同時に私たちも付き合い始めて、結局は友人たちの方はすぐに別れてしまった。
「しょうがないよ。あいつ軽いからさ」
「まあねー。あの子も我儘だし」
友人をこき下ろしながら私たちはまあまあ上手くやってる。
「サキコさんは大人だからなあ」
そりゃそうだよ。大人だもん。
「我儘とか言ってくれたことないし」
軟骨の唐揚げをつまみ上げて祐介の口に入れてやりながら私は苦く笑う。
それはね、祐介君。私は男に多くを求めないからだよ。
こうやってたまに会ってそこそこ楽しい時間がすごせればそれで充分。あなたみたいなぺーぺーにブランド品をねだろうなんて思ってないから安心しなよ。
口に出して教えてあげることでもないから、もちろん私は黙ってる。
「祐介は仕事どう? ぼちぼち慣れた?」
彼はこの春に地元のIT企業に入社し、研修でさんざんあちこちの部署をたらいまわしにされた後、ようやく配属先が決まって落ち着いたところらしい。
「うん。同期のやつらみんな一緒だから気が楽。なんか来月からバラバラに出向させられるみたいだけど」
「ああ、そうそう。プログラムの仕事ってあちこちの企業に行かされるんだってね」
「しんどいなー」
「社会人なら慣れないとね」
ずっと同じ場所でのんべんだらりと働いてる私が言うことでもないけどさ。
取るに足らないおしゃべりをしてビールを二杯飲んだ後はお楽しみの本番。いつものホテルのいつもの部屋に入る。
自分で言っちゃうけど私はセックスが好きだ。味気ない毎日の中でこれがいちばんの気分転換といってもいい。かといってそればかりになるのも怖いから、祐介との今の頻度は丁度よくてとてもいい。
更に年下彼氏のいいところは主導権をこっちが握れるということ。
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