第14話 ドラゴンの襲来!

赤い屋根の小さな丸太小屋に着くとミレノアールは扉をノックした。

しかし少し待っても期待した返事はない。


「クロエのやつ・・・いないのかな?」


「ねぇ、「どえす」って何ー?」


「めちゃくちゃ怖ぇーってことだよ。」


「ひぇ!」


ルーシーはミレノアールの後ろに隠れた。


「仕方ない。ここで少し待ってみるか。」


二人はその場に腰かけてルーシーの持ってきたパンを食べた。


「ねえねえ、師匠は何歳なの?」


「相変わらず唐突だな。何歳に見える?」


「んー・・・25歳くらい?」


「はっはっは。いい答えだ。将来出世するぞ。」


「正解?」


ルーシーは嬉しそうにミレノアールを見た。


「全然違う。正解は120歳だ。」


「えー!? ウソでしょ!? めちゃくちゃおじいちゃんじゃん。」


「サバ読んでるぞ、ミレ。本当は124歳だ。オレ様は契約でミレの魂と繋がっていると言ったろう。魂は年輪を刻むからな。」


横からファレルも加わった。

ルーシーは、信じられないという表情でミレノアールとファレルを交互に見た。


「俺が歳を取らないのはファレルとの契約によるものが大きいんだが・・・まあそれは置いといて、一ついいことを教えてやろう。『魔力を持つ血統ウィザーズ・ブラッド』っていうのはな、魔力によって老化を遅らせることが出来る。だから強い魔力を持つ者ほど長生きなんだ。過去には千年も生きたっていう魔女もいるらしい。」


「千年も!? すごーい! じゃあ私も、もしかしたらそれくらい長生き出来ちゃうかもしれないのね。」


「ルーシーの場合はまず覚醒してるかどうか確かめないとな。妹のクロエは、そういったことにも詳しいから見てもらうといい。」


「クロエさんも100歳超えてるの?」


「ああ、もちろんだ。だがほとんどの魔女ってのはな、長生きするのとは別に、魔法を使って見た目を若い頃のままに保とうとするんだ。まあ化粧みたいなもんだな。本当はおばあちゃんでも見た目はピチピチの頃と変わらなかったりするんだぞ。」


「じゃあ師匠もその魔法、使ってるの? 124歳には見えないもの。」


「さっき少し言ったが俺の場合はだな、ファレルとの契約によって、」


――― !!!


「おい、ミレ! 何か来るぞ! とてつもなく大きな魂だ。それも人間じゃない。」


ミレノアールの話を遮ってファレルが声を荒げた。


「上だ!」


ミレノアールたちが上を見上げると「ギャォォォォォォン!」という咆哮とともに、太陽の光を遮る大きな影が横切った。


「ドラゴンだ!」


「ドラゴン!? 襲ってこないよね? 大丈夫なんだよね?」


「いや、明らかに様子がおかしい。こっちを牽制しているような感じだ。もしかすると奴のナワバリに入っちまったか。」


「どうする、ミレ? 今のお前の魔力ではろくに戦えるかわからんぞ。オレ様も昨日使った魔力はまだ回復しきっとらんしな。」


「どうもこうもねぇよ。襲ってきたら戦うしかないだろ。人を襲うドラゴン退治は昔から魔法使いの仕事の一つだからな。」


ミレノアールは覚悟を決め、右手で剣を抜き、左の手のひらに魔力を集めた。

その傍らでルーシーは驚き戸惑いながら走り回っている。


「コラ! うろちょろするんじゃねぇよ。危ねぇだろ!」


―――「ギャォォォォォォン!!」


そうこうしているうちに上空で飛び回るドラゴンは、一度上昇したのち勢いをつけてこちらに向かって突っ込んできた。


「ヤバい!」

「うわああああ!」


――― ドーーーン!


ミレノアールはルーシーを抱えて間一髪でドラゴンの攻撃をかわした。

しかしそれもつかの間、地上に降りたドラゴンは、今度は大きな口を開けて炎を噴き出した。


――― ボワワワァァァーーーーッ!


「炎ならオレ様に任せろ!」


ファレルは負けじと自分の炎の魔法で対抗する。

だが本来の力が出せないファレルは、ドラゴンが吐く炎に押し負けそうになっている。

塞ぎきれない炎がミレノアールとルーシーに襲い掛かった。

ミレノアールはルーシーを守るため、左手に溜めた魔力を使って防御魔法を発動した。

こちらから攻撃する隙を作れない。


「どうする、ミレ? これじゃ防戦一方だぞ。」


「わかってるよ! 俺が囮になる。ファレルはこのままルーシーを守っててくれ。」


そう言うとミレノアールはドラゴンの左側に回り、持っているに剣に魔力を込めて力いっぱい切りかかった。


―――ガチン!


ドラゴンの皮膚は鋼鉄のように固く、ミレノアールの剣を弾いた。

一連の行動にドラゴンはミレノアールに視線を向けた。

次の瞬間、ドラゴンの長く大きな尻尾がミレノアールを襲う。

固く鋭いドラゴンの尻尾が直撃した。


「ぐはっ!」


不死身とは言え、そのダメージは計り知れない。常人なら間違いなく即死レベルだろう。

死ぬことはなくとも一発K.O.されたミレノアールは当分立ち上がることさえ出来ないでいた。


「師匠ー!!」

「ミレ、大丈夫か?」


その声にドラゴンは、――― ギロッ!と鋭い目をルーシーに向けた。

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