第13話 朝陽と赤い屋根の丸太小屋
一晩中ホウキで飛び続けてると、辺りが少しずつ明るくなってきた。
「おい、起きろ。ルーシー。」
「んんー? なにー? もう着いたの?」
「まだだよ。それより左向いて見ろ。」
ルーシーは言われた通り、空の上で左を向いた。
するとちょうど地平線から昇る朝陽がルーシーの目に飛び込んできた。
「わぁ! 綺麗!」
空の上から見る朝陽はとっても大きくて、今にも吸い込まれそうになるほどだった。
ルーシーは初めて見る光景にしきりに感動した。
「魔法が使えればこんな景色も毎朝見ることが出来るんだよね! やっぱり魔法ってスゴいよ! 私も早く魔法が使えるようになるといいなぁ。」
「おい、あっちも見てみろ。」
ミレノアールは朝陽と反対側を指差した。
「なにあれ? おっきな鳥ー!」
「バカか、ルーシー。あれは『ドラゴン』だ。遠くを飛んでるからそんなに大きく見えないけどな。近くで見たらめちゃくちゃデケェぞ!」
「ええ! ドラゴン!? 襲ってこないの?」
「アハハハッ。ドラゴンが狂暴で人間の敵っていうのは勘違いだ。こちらから攻撃しなければ何もしてこないよ。」
「そうなんだー。ドラゴン初めて見たー。」
「世界にはな、珍しい生き物がたくさんいるんだ。絶景だってこんなもんじゃないぞ。早く一人前の魔女になって世界中を冒険するといい。」
「うん! もちろんだよ。そのために今から魔法学校に行くんだから!」
ルーシーは無邪気に答えた。
「お前・・・もう俺の弟子になったこと忘れてるだろ・・・」
「あっ・・・わ、忘れてないよ! 師匠が仮だって言うから。」
「いや、お前今、絶対忘れてたろ!」
「忘れてないって! それより王都にはあとどれくらいで着くの?」
ルーシーは慌てて話をすり替えた。
「ああ、それだがな。王都に行く前にちょっと寄りたいところがあるんだ。いいか?」
「うん! いいよ。師匠の行きたいところならどこだって着いていくよ! だって私は師匠の弟子だもん。」
ここぞとばかりにルーシーはごまをすった。
それから少しばかりホウキで空を飛び続けていると目的の地域に着いた。
王都からは北西に位置し、100㎞ほど離れている。
そこら一帯は、森と荒れ地に囲まれてとても人が住んでいるようには見えない場所だった。
「ここら辺だったと思うんだけどなー。」
「ところで師匠が寄りたい場所ってどこなの?」
「ああ、ちょっと会いたいやつがいてな。ここら辺に住んでるはずなんだ。」
「会いたい人? もしかして師匠の彼女? もしくは奥さんとか?」
「なんでちょっと楽しそうなんだ? どっちも違うよ。俺の妹だ。」
「なーんだ。妹か。師匠ってもしかしてシスコン?」
「違うわ! だが優秀な魔女だぞ。魔術を研究していて封印や呪縛の類いなんかにも詳しい。」
「魔女!? そんなにすごい人なら私の師匠になってもらおうかなー。」
ミレノアールは思わずホウキからずり落ちそうになってしまった。
「お前はいったい何人の師匠を作るつもりなんだ?」
「え!? ダメなの?」
「当たり前だ。弟子にとって師匠は生涯一人だけだ。師匠は弟子を何人とってもいいけどな。」
「じゃあ、私が師匠になる!」
ミレノアールは今度こそ本当にホウキからずり落ちそうになるのを必死に堪えた。
「言っとくが妹はドSだぞ! 気を付けろよ。」
「どえす・・・って何?」
「・・・・・・。いいからルーシーも探すの手伝えって。
二人と一匹は、人気のない森の近くを上空から探した。
「あ! あれじゃない? ほらあそこに家がある。」
最初に見つけたのはルーシーだった。
確かにそこには赤い屋根の小さな丸太小屋があった。
「凄いなルーシー。魔力が戻りきってないミレはともかく、オレ様より先にこの結界から見つけるなんて。」
ファレルは驚きを隠せないでいる。
「おお! あれだ。よく見つけたな、ルーシー。―――よし、じゃあ降りるぞ。」
(クロエ、いてくれるといいが。)
ミレノアール一行は、ルーシーの見つけた小屋の近くに降り立った。
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