Distance of Heart

@kkid

第1話

D・O・H

〜Distance of Heart




終わりと始まり





俺は一週間前、仕事帰りに飲酒運転のトラックに突っ込まれて死んだ…。



その日は彼女と喧嘩して気まずいまま口も聞かず家を出た。



帰りに欲しがってたネックレスを買ってそれを持って謝ろうと思ってた。



未練があると成仏出来ないってのは本当らしい。



自分の死体を宙で見ていた。不思議な程冷静だった。



あー。俺…死んだんだ…って。



20分くらいして彼女が来た。



彼女はすぐに俺が握ってる箱からはみ出してるネックレスに気がついた。


彼女は泣きじゃくって

こんなのいらないから返ってきて…お願い。

貴方がいてくれればいいから…。


そしてひたすら…ごめんね。ごめんね。って。



謝りたいのは俺の方だよ…俺も一緒に泣いた。



彼女は俺の親に背中をさすられながら帰宅した。



俺も家に帰った。



家に帰っても彼女は泣いていた。



俺は凄くもどかしくなった。



声も届かない。触れることも出来ない。



どーする事も出来ない俺はその場に佇むしか無かった。



それから3日後…俺の葬式をやった。



これも不思議な気分だ…



俺はここに居るのに俺とサヨナラする家族や友人…そして彼女。



火葬する時も彼女は最後の最後まで拒んでいた。



彼女の両親が抑えていないと暴れてしまいそうだ。



そして俺は骨になった…。



遺体は綺麗に修復されていたが骨はめちゃくちゃだった。顔も陥没し肋骨は粉々。右腕はもはや原形など殆ど無い。



それをただ宙から見つめていた。



程なくして裁判が行われた。



「被告人…貴方は飲酒運転をし、人を殺しましたね?」



「分かりません…覚えていません。」



被告人は全く反省していなかった。



彼女は殺気狂った目で被告人を睨んでいた。



当然被告人は重過失致死傷罪で5年の禁錮が言い渡された。




それから彼女が狂っていく様子を見ているしか無かった。



何度も包丁を忍ばせ刑務所に行こうとしたり、自分で手首を切ろうとしたり。



その度にネックレスを見ては泣き出し、実行する事は出来ない日々を繰り返していた。



段々俺を殺し彼女を狂わせたトラックの運転手をどうにかして殺したくなった。



本当はもっと早くそうするべきだったんだろう。



だけどそうしたらもう彼女に会えなくなる気がしていた。



でももうこれ以上こんな彼女を見ていられない。



俺は奴を殺す事に決めた。



実際殺せるかどうかなんて知らないけど自分の中で妙な確信があった。



すぐに刑務所に向かった。



奴は呑気に寝てやがった。



俺は奴の真上まで行く。



これで殺せば彼女は少しは楽になるだろう。



手をそっと首に近付ける…。



感触があった…。殺せる。



俺は全力で首を絞めた。



うご!!


奴は苦しそうに必死にもがく。



うぅうう!!…が……。



死ね!死ね!死ね!



お前が生きてるだけで彼女が不幸になる!



死ね!死ね!死ね!




あ…あ…あ……



奴は瞳孔を開きながら白目を向く。



「待ちなさい……」



そう聞こえた。



俺は咄嗟に力を抜いてしまった。



はぁ…はぁ…はぁ。



俺は後ろを振り向く。



「私は成仏出来ない霊を見廻っている仏霊です。


貴方の事は気の毒に思います。


そこで貴方に選択肢を与えます。」



「選択肢?」


仏霊

「ええ…。貴方はここで彼を殺して地獄に落ちる


か。それとも今素直に成仏して10年後に生まれ変


わるか…。」



「そんなの決まってる!俺はこいつを殺して少し


でも彼女を楽に…」


仏霊

「まだ話は終わってません。最後の選択肢…一旦


地獄へ落ちます。そこでいくつかの試練を受ける


事で1日だけ彼女と繋がる事が出来ます。


ただし…霊界と人間界が繋がる日は太陽が最も沈


むのが早い日…12月22日の年に1回だけです。」



「12月22日………の誕生日……。」


仏霊

「そうですか…それは偶然ですね。今からですと


ちょうど半年後ですね。それまでに試練を終えな


いと行けません。」



「………試練に失敗したら?」



仏霊

「地獄でも死ぬ事はあります。地獄で死ぬと二度


と転生出来ず、魂が消滅してしまいます。もちろ


ん失敗しても死なない事もありますけど。」



「………。」


仏霊

「迷っているようですね。確かに私は選択肢を与


えましたが…決めるのは貴方です。ですが貴方は


彼女に言い残した事があるんじゃないですか?も


しあるとしたら、それをしっかり、直接伝える事


が私は一番だと思います。」



そうだ…俺の唯一の後悔は喧嘩して、ムキになって意地張って…心にもない事を言ってしまった。


いつもなら行って来ますのキスをして…帰ってきたらハグをして…。



俺にはちゃんと伝えなきゃいけない事がある。



「俺………受けます…。」


仏霊

「分かりました。ただし肝に命じて下さい。彼女


が生きていればの話です。彼女が今の環境に耐え


きれず、自分で命を絶ってしまうかもしれませ


ん。最愛の婚約者を亡くしたんですから。


彼女が12月22日まで生きてる事を祈るしかあ


りません。」



「大丈夫…彼女は強いですから…。」


仏霊

「分かりました。明日の霊時に発ちます…


それまで側にいてあげて下さい。」



「そうします。」


仏霊

「ではまた明日迎えに上がります。」



俺は彼女の元へ帰った。



彼女は気付くはずもないが横に座る。



彼女の顔からは覇気が無く、ただボーッと2人の写真を見つめていた。



俺は格好だけでも抱きしめた。



気がつくともう霊時だった。


仏霊

「お迎えに上がりました。」



「………。」


仏霊

「挨拶は済みましたか?」



「……いりません。」


仏霊

「左様でございますか…。では地獄へ転送しま


す。最初に北にある1番大きい建物に向かって下さ


い。それから…本名は隠した方が良いでしょ


う。」



眩い光に包まれる。



ピカーー!!!!



目を開けると当然だが見慣れない街があった。



「これが…地獄??」



とても地獄とは思えない程普通の街があり、普通に人が歩いている。俺はてっきりマグマがそこら中から噴き出し、鬼がわんさかいるもんだと思ってた。




周囲を見渡すと北にある1番大きい建物は一目で分かった。



「でけ〜!!!」



でかすぎて近いんだか遠いんだか分からない。



「いかんいかん。試練ってゆーのがどれくらいかかるか分からないが余裕かましてる暇なんてなかった。」



とにかく俺は大きい建物を目指して歩いた。



だけど行けども行けども大きい建物は一向に近づいて来ない。



もうどれくらい歩いただろうか。


俺は尋ねる事にした。



「すいません。ここからあの大きな建物までどれ


くらいでつきますか?」



「………。」



こっちを見向きもしなかった。



「こっちの言語があるのかな…」



俺は他の何人かにも聞いて歩いた。



「ちょっとあんた!何やってんのよ!」


最小限の声で俺に話しかけてくる。



「え?」



「え?じゃ無いわよ。貴方もしかして新入りな


の?」



「さっき来たばかりです。」



「あんたねぇ。いい?覚えておきなさいよ!


フードにマークがあるでしょ?」



「はい…。あのゴリラ見たいな…」


ばちん!


「いてっ!」



「しー!!声がでかいわ」



「すいません…。」



「そうよ。あのゴリラみたいなマーク。あれが付


いてる奴らは全員敵と考えた方がいいわ。」



「敵…ですか。」



「このフロアーを牛耳ってる集団なの。


“ラリゴ”って言うんだけど下手したら死ぬわ


よ?」



「ラリゴ…ゴ…リラ。やっぱりゴリラですね笑」



のそ。



背後から大きい影が現れる。



「ゴリラって??誰の事言ってんの?」



!?


「あ、あああ…あの、聞き間違いじゃー…。」



(や、やばい。ラリゴ本人じゃないのよ〜)



「も…もしかして…この方がー。噂のー。」



ラリゴは背中から大きな斧を取り出し振りかぶる。



2人は慌てる。


「ちょ…ちょっと待っ!!」



ぶん!!!



「きゃー!!!」

「うわー!!ー」


2人とも左右に避ける。


「に、逃げるわよーー!!!」



俺は女に着いて行く。



ラリゴ

「おーい野郎ども!!そこのガキと小娘を捕まえ


ろ!!」



「ぉおおお!!」


「あんた声でかいって言ったじゃない!!」



「後ろに居たんだから仕方ないでしょ!うわ〜


やばい!追いつかれる!」


「いいから走って!もう少しで隠れ家に着くわ!」



2人は角を曲がると女が小さな木蓋を開ける。


「入って!早く!!」



ばたん!


「しぃ〜。」


女は指を口の前にあてる。



俺は頷く。



全力で走ったためお互い息が凄い乱れてる。


その上狭い部屋と来た。ほぼ密着状態。



「はぁ…はぁ。」お互いの吐息が混ざり合う。



バクン…バクン。



俺は色んな意味で緊張している。



ちらっと女を見ると暗いせいか顔が火照ってる様にも見える。



「はぁ…はぁ。」


「あなた…息…荒いわよ…。」



「き、君の方こそ…。」


「そ、そうかしら?」



俺は目が合ってる事に耐えきれず俯く。



(この男…近くで見たら可愛い顔してるのね。


……やだ。私ったら何考えてるのよ。)



「そろそろ…いったかしら。」



女はそぉっと蓋を外す。



「大丈夫みたいね…出てきていいわ。」



俺は外に出る。



「助かったよ。ありがとう。まだ君の名前を聞い


てなかったね。」



「人に名前を聞く時は、まず自分から名乗るもの


よ!当たり前よ!あ・た・り・ま・え!!」



「そうですよね。僕は…ん?危ない!!」



女の後ろからラリゴの兵隊が襲って来た。


俺は女に飛び掛かる形で避ける。



ラリゴの兵隊

「っち…もう少しだったのによ…。けど安心し


な。増援は呼ばねーよ。なぜなら全て俺の手柄


にしてラリゴ様に認めて貰うんだからよぉ。」



「だったら好都合ね。ラリゴには勝てないけど


あんた一人になら負けないわ。」



俺は女の台詞に?になっていた。



「霊器(れいき)・海月鞭(ジェリーウィップ)」



「え?何?どうなってんの?」



ラリゴの兵隊

「ほう。女戦士か。それに顔もまぁまぁと来た。


今なら俺の女にしてやってもいいぜ?」



「あんたにまぁまぁは言われたく無いわね。


それから…あんたの女⁇死んだ方がマシね!」



女は男に向かって走って行く。



ラリゴの兵隊

「槍の俺に正面から来るなんて馬鹿な女だ!!」



「馬鹿はあんたよ‼︎」


ラリゴの兵隊に向かって鞭打する。



ばちん!!



ラリゴ兵隊は交わして槍で突く。



がはっ!!



ラリゴ兵隊

「身体が…動かない。なぜ…」



「クラゲの針はね。見えないのよ。


じゃサヨナラ〜。」



バチバチ



ラリゴの兵隊を呆気なく倒してしまった。



「今のうちに安全な場所へ行くわよ。」



俺は唖然としながらも女に手を引かれ付いていった。










































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