とらの子
カゲトモ
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こんこん。
ドアがノックされた。開店時間まであと二時間もある。こんな時間に誰だろう。
神出鬼没な占い師か、でかい猫耳オネェか? なんて、脳内に二人が浮かんだが、まぁ何でもいい、俺は今暇なのだ。勧誘以外ならなんでも話を聞いてやろう。
と、思いつつ扉に手を掛けた。
「はーい」
がちゃ。
「こんにちは」
そこにいたのは小さな少年だった。
「おぉ、こんにちは」
礼儀正しく丁寧に頭を下げた少年とは、つい先日知り合ったばかりだ。
「おにいちゃん、このまえはありがとう」
「いんや、こっちこそお手紙ありがとうな」
小さな頭を手のひらでグリグリ撫でまわすと、少年が屈託なく笑った。
「えへへ」
「ジュースでも飲んで行くか」
「え! いいの!?」
「何が飲みたい?」
全身で「やったー!」と喜びを表現する小さな背中を押して扉を閉めた。そう言えば名前は何て言うんだ?
「こたろう、だよ」
「コタロウ? 格好いい名前だな」
コタロウの為にオレンジジュースをグラスに注ぐ。背の低いコタロウが座るスツールは足が着かないのが逆に楽しいらしい。
「おにいちゃんのおなまえはなんていうの?」
「名前か? 想太だよ」
ストローを咥えた口が、すっぱい! ときゅっとすぼんだ。百パーセントのオレンジジュースだから、子供には酸っぱかったのかもしれない。
「水飲むか?」
「だいじょうぶ。びっくりしただけ、おいしいよ」
「それならいいけど。お菓子食べるか?」
「うん!」
つまみとして出しているチョコレートと、お客様から頂いたお土産がある。つい数のあるお土産なんかは一人で食べられなくて、バイトの斉藤君やミケの店に持って行ったりするから食べてくれるなら俺も助かる。
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