155冊目 ドラキュラ・ドラキュラ

 どうも、吾輩です。

 こういうタイトルの短編集があったんですよ。


 で、それをタイトルに持ってきたのは伝統派吸血鬼の話をしたかったわけで。最近アニメ化もされた、伝統色の強い大人気吸血鬼漫画があるのだ。


 「吸血鬼すぐ死ぬ」である。


 もちろん話題に出すくらいだから吾輩も読んでいる。ファンである。「あの破天荒ギャグのどこが伝統派なのか」はこれから説明する。


 2大巨頭は「吸血野菜」と「ツクモ吸血鬼」である。

 吸血鬼伝説というのはいろんな民間伝承を取り込んでいるものなので、各地にトンデモ吸血鬼の伝承が残っている。もちろん吸血野菜もその1つで、収穫期を逃しても畑に放置されたスイカに血管のような模様が浮き、唸り声をあげて転がりまわるという。ちなみにどうやって血を吸うかは知らない。ほかにも吸血鬼化する野菜は多々あるが、どうも瓜科がなりやすいらしい。

 ツクモ吸血鬼は日本の付喪神のように、思いを込めて使われた道具が吸血鬼になるという現象だが、これもある。ただ吸血鬼となると海外の伝承がほとんどなので「納屋に放置されていたホウキが扱いの杜撰さにブチキレて吸血鬼化」みたいなパターンもある。

 

 「なんにでも変身できる吸血鬼」というのも実は伝統派だ。メジャーどころだと狼や蝙蝠だが、古い伝承では本当になんにでも変身する(※1)ので、不審物は吸血鬼と思え、という状態に陥る。きっと今どきの吸血鬼なら、ライターとかボールペンとか、さりげなくあってもばれないようなものに化けるのだろう。

 うちにもいないだろうか……。


 ほかにも作者さんのアンテナには本当に感心する。おそらくワールドオブダークネス(※2)も通ってきている。作中に登場する吸血鬼「ヴェントルー」はまんまゲーム中に登場する氏族名だし、「エルダー」もガワの外見からしてノスフェラトゥ(本家映画(※3)かゲームかはわからないが)を元ネタにしている可能性があると踏んでいる。また、使い魔がアルマジロなのも古い吸血鬼映画のオマージュとどこかで読んだ。控えめに言ってすごい。


 更新は停止しているが、拙作に「吸血鬼に噛まれてもドラキュラにはなれない」という吸血鬼語りエッセイがあるので、気になった方はそっちもよろしく(宣伝)。



※1 なんにでも変身する

 寝苦しくて目を覚ますとベッドの上に1本の麦わらがあり、何の気なしに半分にちぎって床に捨てておいたら、翌朝半分にちぎれた女が床に転がっていたというスプラッタな話もある。もちろんこの女が吸血鬼。


※2 ワールドオブダークネス

 主に海外で人気を博している、ダークな世界観のTRPGシリーズ。その中にプレイヤーが吸血鬼になってなんだかんだする「ヴァンパイア:ザ・マスカレード(※4)」という作品が存在する。


※3 本家映画

 「吸血鬼ノスフェラトゥ」という吸血鬼映画が存在する。かなり古い。禿げ頭で耳のとがった、いかにも怪物然とした外見の吸血鬼が登場する。


※4 ヴァンパイア:ザ・マスカレード

 しばらく前に「ヴァンパイア:ザ・レクイエム」という大幅リニューアルしたルールブックが発売された。読みたい。

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