100冊目 残らないもの、残るもの

 どうも、吾輩です。記念すべき100回目にもかかわらず気分は低空飛行です。

 好きなソシャゲが死んだから。

 というわけで今回はソシャゲ回となります。


 死んだというと語弊がありまだ生きているのだが、7月31日をもってサービス終了というアナウンスがあった。それまでの期間は、いわば、余命である。

 今までこのエッセイでも何度となく言及してきた「天頂」のことなのだが、すごくつらい。サービス終了のお知らせを知ったときは目の前がぐらぐらした。今は気持ちがだいぶ落ち着いてきたので「残された日々でたくさん思い出を作ろう」モードに移行し、やり残したこと(推しの育成とか、メインストーリー進めるとか)を少しずつ消化している。


 吾輩の話はこのくらいにして。

 以前Twitterかネットニュースか、その辺で読んだのだが「ソシャゲはサービス終了すると何も残らない」ということが言われていた。

 確かに。

 商業作品であれば、小説、漫画、ゲームなどは世に出ればものが残る。「ものすごく古くて数が少なく流通しない」とか「そのゲームをできるハードはもう存在しない」といった場合もあるにはあるが、たいていの場合頑張って探せば見つかる。そして、その作品を味わうことができる。

 対してソシャゲの場合、なんにもなくなる。

 再プレイもちろん不可、つまりエピソードの確認不可、キャラクターイラストの確認不可。イラストについてはネット上に転がっているものもあるだろうが、ごく一部だ。あとから「名作だったよ」と聞かされて興味を持っても、そもそもプレイできないのだから意味がない。ググって情報探しても、「やってみたかったなぁ」と悔しさが募るばかり。サービスが終われば、公式サイトもなくなってしまう(※1)。


 最近のソシャゲは、サービス終了後にCG集を配布してくれる(※2)傾向にあるらしい。キャラクターの立ち絵やイベントの1枚絵、ものによってはBGMやシナリオテキストなども入っている。

 うれしい限りだ。何も残らないより、残るほうがいいに決まっている。


 だけれど、そのキャラクターたちが動くことはもうない。

 この動くというのは新しいシナリオで動く、ということではなくて、あの画面で、あのテキストウインドウで、あのボタンをクリックすると先に進んで、という、ゲームのインターフェイスで動くということだ。

 キャラの立ち絵もあるし、シナリオテキストには台詞があるけれど、それが同時に「あの画面」に表示されることはない。画面が揺れたり、フラッシュが走ったり、そういう演出ももう2度とない。

 でも、そのシーンをプレイした「記憶」を呼び起こすことはできる。


 こう考えると、CG集、素材集というのは「元プレイヤーのための」「追憶の装置」なのではないか。シナリオを全部読んでも、キャラの顔と名前を全部覚えても、結局ゲームをプレイしていなかったら、そんなに面白いものではないのかもしれない。というか、ないだろう。たぶん。


 本格的に何が言いたいのかわからなくなってきた。

 酔いつぶれる前に急いでまとめよう。


・まず、ソシャゲはサービス終了したら何も残らない。

・でも、最近はCG集を配布しているところが増えている。

・そうするとデータは一部、プレイヤーの手元に残る。

・でも、すべてのデータが得られるわけではないし、プレイ中のわくわくにはかなわない。

・それでも、手元にあのゲームを愛した名残があるのなら、うれしい。


 だいたいこんな感じであろうか。


 さて、吾輩の話に戻そう。

 あと1か月ほどの短い期間ではあるが、めいいっぱい推しをかわいがってストーリーに胸を躍らせ、ばしばしスクショ撮っていこうと思う。不謹慎な言い方だけれど、盛大に、派手な葬式(※3)を上げてやりたい。実際に式を挙げるわけではないけれど、吾輩の中で、納得のいくこと、できるだけたくさんやりたい。


 よいゲームに出会った。

 よいお別れにしよう。 


※1 公式サイトもなくなってしまう

 まれに、公式Twitterアカウントはしばらく稼働していることもある。


※2 サービス終了後にCG集を配布してくれる

 有料・無料はゲームによって異なる。有料であっても「プレイヤーレベルいくつ以上で無料」とか「何日以上ログインで無料」とか、やりこんでくれた人にはタダでくれる場合もある。


※3 葬式

 葬式に関しては中島らも先生の短編「えびふらっと・ぶるぅす」に出てくる話がじわっとくる。

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