70冊目 例の数字

 どうも、吾輩です。

 前回パスワードの話をしたので、ちょっと思い出しまして。


 腐女子界隈では「例の数字」というものが存在する。

 ヤマなし、オチなし、イミなし(※1)から転じて「やおい」といえば、BL作品を指すのが一般的だ。かつてはジャンル問わずヤマなしオチなしの作品を指して使われていたこともあるようだが、現時点においてやおい=BLであろう。

 この「やおい」であるが、語呂合わせで「801」と表記することもある。


 腐女子にとって「例の数字」と言えば、基本的にこれを指しているといってもよい。


 そのためサイトや作品のパスワードにヒントとして「例の数字」とだけそっけなく書かれていたとしても、我々は悠々とそこを突破していけるのである。警備員さんに社員証を見せるが如しだ。何の心配もない。


 と、思いきや。


 それだけでは突破できない関門もあったりするのである。

 吾輩が今まで出会ってきた「例の数字」がらみのパスワードは「(そのサイトで扱っている)メインキャラの年齢+例の数字」「そのジャンルの1巻の発売日と例の数字をばらして足した数」「メインキャラの身長+例の数字」「AとB(そのサイトのメインCPキャラ)が戦った話数+例の数字」等々……。

 中にはそれらを混合しためちゃくちゃ長い計算式の末に導かれる数値のあとに、キャラの好きな食べ物(要英訳)の入力が必要だったりと、「これで駄作しかなかったら許さんからな」と歯ぎしりしそうなサイトもあった。


 それでもまだ、調べれば自分で答えを導き出せるぶん請求制よりは気が楽である。


 請求制はサイトそのものよりも裏ページ(※2)の場合に多く、表ページで閲覧した作品が素敵であればあるほど見たい気持ちは高まる……が、請求制というと管理人さんに直接メッセージを送らねばならない。

 これが最難関である。

 今でこそ同人作品を「描いている人」「読み専の人」の垣根がSNSで埋まってきているが、当時はサイトの管理人さんは神様であった。

 神様に直訴すすなど恐れ多い、失礼な文章になっちゃったらどうしよう、そもそも神様と直接「エロが見たいです!」なんて連絡するなんて恐れ多い……!

 というチキンな理由で、吾輩はめったなことではパスワード請求はしなかった。


 そのあたりの崇拝根性が染みついているから、創作界隈で友達と言えるほどの友達ができないのかもしれない(責任転嫁)。


 なお。

 ジャンルによっては「例の数字」からしてジャンル固有のものもあると、ここに記しておこう。


※1 ヤマなし、オチなし、イミなし

 「やおい」がBLの意味を持ってからの派生であるが「やめて お尻が 痛い」「やっぱり お尻が いい気持ち」など多数のネタが存在する。


※2 裏ページ

 大概はエロ。

 稀にグロの場合もある。

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