手の届く限り

朝槻憐

序章

全ての始まり。

その日はとても良い天気であった。

青い空、白い雲。澄んだ風が心地よい日であった。


「きゃーーー!!」


そんな日常はその叫び声一つで崩れて行ったのである。

周りに言わせれば俺は馬鹿をやっていると思う。叫び声に呼応し、その元から逃げ惑う人々の群れに逆らい反射的にその叫び声の元に駆け出しているのだから。

決して都会と言えるような場所ではないが田舎という程閑散とはしていない。そんなありふれた場所なのだが、こうも皆が同じ方に駆け出していると逆らうのも一苦労である。



この苦労を感じた時点で足を止めておけば、こんな事にはならなかったのに。

ちっぽけな正義心を持たなければ良かったのだと。

自分が非力である事を何故考えなかったのか。

無知ゆえに勇気と蛮勇を履き違えてしまった事を。


そして、事実は小説よりも奇であった。



俺はこの日のこの行動を近い未来、後悔するのであった。

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