東京国の魔法使い

高山しゅん

プロローグ

 夜道をさまよっていた魔法使いは、ふと、人類を滅ぼそうと考えた。

 それはこの世に生きる者なら誰でも一度は考える、空想や妄想の一つ。

 しかし魔法使いは、それを実現できる力をいつの間にか持っていた。


 かくして人類は一人残らず命を失った。

 一人残らず。つまり、魔法使い自身もこの世界から消えてなくなった。


 次に魔法使いが目を覚ました時、そこには以前と変わらない景色があった。

 そこには街があり、大勢の人間が生きていた。


 魔法使いは再び彼らを滅ぼした。


 同じことが何度となく繰り返された。

 どれくらいの時間、どのくらいの世界に生きる人間を滅ぼしただろう。

 次第に魔法使いは疲弊してきた。己の力が弱まるのを感じ始めていた。


 次はもう、うまくやれないかもしれない。

 残念だ。

 しかし、ようやく終われる。

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