こんな青春は間違っている
日ノ本 ナカ
1話
俺は、一ノ瀬 芽依。歳は15才だ。
容姿は自分でいうのもなんだかそこそこいい所にある。顔の良さは、実の両親が美形だったから遺伝子なのだろう。
髪の色は、日本男児として当たり前な黒。身長は180cmとモデル顔負けのスタイルなのだ。
そして、自分で言うのもアレだが、結構金持ちなのだ。"今の"というか"実の"親が。
生まれた時からずっと一緒に過ごしていた両親は、実は一ノ瀬家の家令だったとか。
家令って言っても食べ物のカレーじゃない。執事って方の意味の家令な。
血の繋がりとかも、全くないのだとか。
何故そんなことになったのかというと、簡単な話し、当時の一ノ瀬家は刺客から命を狙われていたのだとか。
そこで、俺の本当の父親が家令の二人に頼んで俺を別の所で匿うよう命令をした。「息子を、健やかに育ててくれ」と。
そして、中学の卒業式間際、平凡な食卓でいきなりテレビに俺の顔が表示されていた。
いきなりの状況に、何事だと驚いていたら、俺が実は一ノ瀬財閥の跡取りでしたと大々的に発表されていた。
それを観た、両親は懐かしむように画面に映る一ノ瀬氏を見つめていた。
「やっと、芽依を会長のもとにお送りすることができる。いや、もう芽依様かな」
と、からかう父−田中 明宏と
「芽依、ごめんね。ずっと騙してるような真似をして。でも、この十五年間芽依の母親をやれて、とても嬉しかった。会長のもとに戻ってもいい子にするのよ」
と、優しい母−田中 公子の声を聞いた。
それから、数時間後にでかい車がやってきて、俺を乗せ、一ノ瀬財閥の家へと送られた。
そこでは、実の父−一ノ瀬 弘樹と母−一ノ瀬 明菜が、俺を泣きながら抱きしめてくれた。
これまで、与えられなかった分の愛を与えるかのように。
実感などは湧かなかった。
そりゃそうだ、生まれてずっと一緒にいた両親が実は赤の他人でしたと言われても信じられないし、正直戸惑う。
それでも、その愛が本物だということは、理解する事ができた。
今までのこと、そして、これからのことを三人で話し合った。
途端に両親は、何事かを話して、すぐに何処かに電話をかけた。
「芽依、これからの高校生活は、きっと楽しくなるぞ。彼女がすぐできるといいな」
弘樹は、優しい父の声で言ってきた。
その言葉の意味を知ったのは、新しい家での生活が慣れ、高校の入学式が始まった時だった。
完結にいうと、俺の志望校は、女子校と合併していた。なのに共学では無く、女子校の中に俺が一人編入しているような感じだった。
入学式の後のホームルームで、学校で唯一の男子ということでクラスの女子やら先輩やらに色々と声をかけられた、、、、が、俺は、そこから逃げ出した。
当たり前だろ!
だって、目の血走った連中に声をかけられて、平然としていられる奴がどこにいる!
走って、走って、屋上へと向かった。
ドアを開き、勢いよく閉めた。
「ここなら、誰もいないだろ」
ふと、誰かの視線を後ろから感じた。
「ごめんなさいね私なんかがいて。すぐに出ていく」
金色の髪に、綺麗な翡翠色をした、どこか無気力な少女がそこにいた。
彼女は、そう言って、そそくさと本を閉じ屋上から出て行った。
「可哀想なことをしたな」
と、思ってたら、またドアが開いた。
さっきの子かなっと思ったら違った。一人の男子生徒が入ってきた。
え?ちょっとまって?男子?俺以外にも男子がいたのか!
「やあ、君が一ノ瀬 芽依くんだね。ボクの名前は、星乃 昴だ。よろしく、芽依くん!」
いきなりの展開に、頭が追いつかないが、とりあえず返事をしないと。
「ああ、よろしく。えーと、、、」
「昴でいいよ、芽依くん」
「じゃあお言葉に甘えて、昴」
昴の顔が、サッと赤くなったのだがどうしたんだ?
「君に名前を呼んでもらえて嬉しいよ!」
彼はそう言って、喜んでいた。
多分見た目のせいで、同性とは、友達が出来なかったんだな。可哀想に。
「じゃあ。オレ達は今日から友達だな!」
「あー、そっちか。そうだよね。ボク、この見た目だから、男の子だと思われてるんだね」
と、残念そうにしている。
「えーと、昴?なんか、俺、気に触ること言ったか?だったらごめんな。この学校での初めての友達だから、仲良くしてくれると嬉しいな?」
昴は、キョトンって顔をしてから、何事かを呟くと元気になった。
「ボクが芽依くんの、は!じ!め!て!の友達なんだね!」
なんか、すっごいテンション上がってんな、見てるこっちが引くレベルだ。すると、ドアからすごい音がした。
ドドドドッ!
「そんな!芽依君がBLだっとは!」
「芽依様の尻が掘られる!」
「愚腐腐腐腐腐!」
なんだ、こいつら。
てか掘られるってなんだよ!それ言ったやつ出てこい!引っ叩いやる!
あと最後、なんて笑い方しやがる!背筋が、凍ったじゃねえか!
「何を勘違いしてるか知らないが、」そこで、俺は言葉を切り、隣の昴の肩を抱いた。「俺と昴は、友達だ!男同志の愛ってものはない!」
隣では、肩を抱いた時は真っ赤にして、さっきの発言で顔を真っ青にした、友達の昴がいた。
「ボク達の間には、恋ってないんだね」
何故か、乾いた笑い声が聞こえた。どうしたんだ、こいつ?色々と忙しいやつだな。
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