強さの意味

カゲトモ

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「そーちゃん」

 一瞬自分の事を呼ばれていると思わなかった。だからつい、そのまま通り過ぎようとしてしまったのだ。別に悪気があった訳じゃないのだ。だから腕に纏わりつくのはやめろ。おっぱいが当たっている。

「もう、想ちゃんが無視するからでしょー」

「無視したんじゃないって言ってんでしょ。気が付かなかっただけだし」

「えー嘘だぁ、目ぇ合ったでしょ?」

 えー? 憶えてないですぅ。

「もぉ、そう言うとこが可愛いんだからぁ」

 そう言ってツンツン、頬を付いてくる。分かったから、ツンツンするな。

「郁さん久しぶりですね。こんな時間から出勤ですか?」

「今日はね、ちょっと用事があったのよ。だからこれから店で用意するの」

「へぇ、そうなんですか」

「あら、生意気。このあたしに興味がないとは」

 それでも男なの? と魅惑的な眼差しで言われる。もちろん、立派な男ですとも。

「確かにいつもと雰囲気違いますけど」

「そりゃ、普段用のお化粧だからね。お店用はもっとモリモリ盛るからね」

 そうニッと笑う郁さんは、近所のキャバクラの嬢だ。凛とした美しさとハキハキした物言いが人気なんだと、その店のママが言っていた。確かに、郁さんは強かな美しさを持っていると思う。彼女は俺より少しだけ年上だ。

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