同じクラスの1つ下の彼

やべ

第1話

2月には分かっていたことだった。分かってはいたけれど既にどうすることもできなくなっていて、ただその日を待つしかなかった。2月中旬から始まった春休みはなるべく友達と遊ぶようにしてたけど、心の隅では焦りと不安とほんの少しの願望が這い回っていて楽しいはずの遊園地もカラオケも、ふとした瞬間に胸を締め付けてきて。溢れそうになった涙を堪えながら私は笑顔を振りまいてた。

3月。固定電話のあるリビングで私は興味もない再放送のドラマを見てた。内容なんて全く頭に入って来ない。時計を見ると15時30分。心の隅の願望がみるみる膨れ上がっていって、私は救われたんじゃないかなんて考えてリビングを出ようとした。けど、電話は鳴った。手が、脚が震えた。息を吸う。私は受話器に手を伸ばした。

「………もしもし。浮田です。」

「もしもし。梨加さん?担任の後田です。残念だけど…今日の進級者会議の結果浮田さんは進級ができないことが決まってしまったんだ。それでね、来週の木曜日に保護者の方と高専に来て欲しいんだ。進路のことであったり、もちろん、これからも高専で頑張るにあたっても1つ下の学年と同じ教科書を購入してもらわなくちゃいけないから書類を渡したりもしたいんだ。大丈夫かな?」

「………はい。」

「………それじゃあ、失礼するね。」





昨日は入学式があったって聞いた。私は去年その場にいたはずなのに、また私は同じ教室に向かってる。右往左往する一回り大きな制服を着ている新入生達を抜き去りながら歩き慣れた廊下を最短で進んでいく。40日ほど前まで居たはずの教室の前に私はまたいる。けど40日前とは全く違う景色がそこには広がってて、懐かしさと寂しさが一緒に私の首を締めてきた。意を決して教室に踏み込んで黒板に貼られた名簿から自分の出席番号を探して、振り返った。初々しい新しいクラスメイト達が眼前に広がる。だけど私は全体を見渡す前に、自分の席を見つける前に視線を縛り付けられてしまった。教室の中央の席にその子はいた。高専なんてほとんどが男子なのに、見慣れていたはずなのに、不慣れな気持ちが私の中に………。

私は同じクラスの1つ下の彼に恋をした。

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