女装男子に恋した俺

わかめん

第1話 女装男子と出会った俺


          

「ゆーしろーさんのおうちに泊めてくれませんか?」


 俺とネットフレンドの綺羅くんとの関係はここから変わった。

 俺たちはもともとオンラインゲームの仲間で意気投合しゲーム内だけでなくSNSなどでもコミュニケーションをとるようになったが、夏のある日突然、彼から家に泊めてくれと頼まれた、理由を聞けば彼はとある夏の祭典に行きたいらしいのだが彼の家が地方であるため関東圏に住んでいる俺の家にしばらくの間泊めてほしいとのことだった。正直つきあいは長いが一度も会ったことのない相手を家に泊める事に不安はあったけど互いに会ってみたいという気持ちもあったので了承した。







    第一話 女装男子と出会った俺


 そしてついに彼が来る日がきた。

 お昼前に近くの大きな駅で待ち合わせということで。

 駅前は夏真っ盛りということもあり田舎の中でもまだ栄えていた、街は人の熱気とヒートアイラインド現象によって地獄のような暑さだった、駅の改札を抜けてくる人は主婦も子供もサラリーマンも皆、タオルを片手に汗を縫っていた。

 そんな暑さのなか駅から一人の少女がでてきた。

 年のころは15から17で、身長は160cm弱というくらいで服装は白いワンピースで背中をくすぐるくらいの長さの黒髪だった。

 彼女はこの暑さを周りに感じさせないくらいに涼しく、澄み渡った雰囲気をまとった少女だった。

 俺はこの少女に目を奪われた。

 すると俺は彼女と目が合ってしまった。

 水晶のように青く澄んだ瞳をしていた。

 そして彼女は俺のいる方に向かって歩みをすすめ、俺の前で足を止めた。そしてボーっとしている俺に

「もしかしてゆーしろーさんですか?」と声をかけてくれた。

 俺には訳が分からなかった、俺は確かに綺羅くんと待ち合わせをしていたが綺羅くんは男だ。

 わけもわからず「あ、あぁ・・・」と返し、それっきりポカンとしている俺に対して恥ずかしそうに彼女はつづけて

「あの、ボク・・・・・今日約束していた綺羅です。」

 瞬間、俺に電撃走る。

『どういうことだ、綺羅くんは昔自分で男だって言ってたよな、もしかして女の子なのにそれを隠して俺と接していたのか、待ってくれ俺、油断して綺羅くんにとんでもない下ネタとか話しちゃったよ。待って、俺どうすればいいの?ていうか俺、綺羅くんを家に泊めるんだよな、こんな女の子を?ご両親になんて顔をすればいいの、俺?』

 と頭の中でぐるぐる考えている俺を不思議に思ったのか、彼は、

「あっ、今は明日のコスプレの為に女の子の気持ちづくりというか衣装なれも兼ねて女装してるんです。」

 笑顔で彼は教えてくれた。俺はたじろぎながら実際安心した神様ありがとう。

「けどコミケでコスプレもするんだね、男だって聞いてたからすごい驚いちゃったよ。」

「ふふ、驚かせちゃいましたよね、ちょっとしたボクからのサプライズです。」

 と彼はイタズラっぽく笑った。

 その瞬間胸の鼓動が唐突に速度を速め、彼に目が釘づけになった。


 この笑顔で俺は彼に、恋におちたのだろう。


 正直、その後、車でアパートまで帰ってきたが車の中で何を話したのか、どんな道を通って帰ってきたのかなにも憶えていない。

 ガソリンメーターを見た感じそこそこ遠回りをしたんだろう。

 だけどそんなこと実際はどうでもよかった、正直俺は女性と話すのが得意ではなかった。

 彼が男であるのは頭では理解しているのにさっきの笑顔が忘れられないんだ。

 などと俺が考えていると彼は車からでて、

「へぇー、きれいなアパートですね!」

 とアパートを指さし、腕を振りテンションをあげていた。

「あぁ、まだできてから5年も経ってない結構新しいアパートだからね。」

 そういうと彼は目を輝かせて、

「すごく落ち着きます、とってもいいところですね!」

 そういってまた彼は微笑んでくれた。

 また胸が高鳴った。

「じゃ、じゃあ部屋まで案内するよ。」

 と言い俺は胸の高鳴りをごまかすように彼の荷物を持って階段をのぼった。

 そして家に入り、

「ここが俺の家だよ、中のものは大体好きに使ってくれていいからね。」

 そういって彼の荷物をリビングまで運んだ。

 もっともリビングといっても田舎のちょっと広いアパートだから部屋はこのリビングと寝室、お風呂とトイレ、廊下兼キッチン、後は小さなベランダがあるくらいだ。

「わぁ~ここがゆーしろーさんのおうちなんですかー」

 初めてみる俺の部屋に彼は目を輝かせていた。

 めっちゃかわいい

「ところで寝る場所なんだけどこの家、実質部屋が2つしかないから場所がこのリビングと俺の部屋になるんだけど、どうする?」

 とりあえず数日とはいえ一緒に暮らすうえで大切なことを確認しておく。

 すると彼は顔を赤くして、

「えっ、ゆーしろーさんのお部屋で寝るって・・・・・」

 なんかすごい勘違いをされた、ほんとに男なのか自分でもわからなくなってきたぞ。

「ち、違うから綺羅くんがリビングで寝るなら俺は部屋で寝るし逆に綺羅くんが部屋っていうならおれはリビングで布団敷いて寝るから!」

 慌てて弁解した、ほんとにこの子男同士で何を赤くなってるの!?その気になっちゃうよ?

「あっ、そういうことでしたか・・・・・ごめんなさいすごい勘違いしちゃいました。」

 やっぱり勘違いだったか、それを聞いた俺は苦笑いをして、俺は

「それで、どっちの部屋がいい?俺の部屋なら一応ベッドもあるし、ベッドがいいなら遠慮なくいってくれ。」

 俺の問いかけに彼は逡巡し迷っていたが何かに気づいたように

「あ、ボクはリビングでいいです」と言った

 一応俺は、「ほんとにいいのか?別に気をつかわなくてもいいんだぞ」というと彼は

「確かにベッドもいいんですけどリビングの方がアレに近いんで」

 と言った、しかし俺にはいまいち『アレ』というのがピンと来なかったからつい、

「アレって?」

 と聞いてしまった。

 伏せているのは何かしら理由があるというのをわかっていながら

 すると彼はさらに赤くなり

「えーと、あのー・・・・・ト、トイレ…です。」

 なんかごめん。だけどかわいい。

 だんだん声が小さくなって子供みたいでかわいい。やっぱりごめん。

「あーなるほど・・・・・すまんかった。」

 すごい気まずい空気が立ち込める。

 どうにかしなきゃ

「じゃあ、部屋割りもきたし、昼ご飯でも食いに行くか!」

 俺のテンションに彼も気づいたのか

「そうですね!なに食べましょう?」

 と乗ってくれた

「この辺に古いけど安くてうまい中華の店があるんだ、そこでいいか?」

 地元の大学生御用達の「早い、安い、うまい、多い!」の代名詞のような店なら店の汚さを除けば大丈夫だろう。

「中華ですか、いいですね!」

「じゃあこの時間ならすいてるだろうし、行くか!」

 彼と初めての昼食だ、自然とたのしくなってきた。

 車を十分ほど走らせると店につき、

 俺の予想どうりすいている店内に入っていった。

「おぉ、にぃちゃん!いらっしゃい!」

 いかにも近所の料理屋のオヤジって感じの店主が声をあげる、すると後ろの綺羅くんに気づいて、

「何だい、にぃちゃん、デートの最中かい!こんな汚い店に連れてくなんてわかってないねぇ」

 とからかってきた、まぁ綺羅くんを見てひと目で男だって気付くわけないよなぁ、

「デートじゃねぇし、まずただの友人だ、確かにこんな汚ったない店に連れてきたのは間違いだと思うよ、けどオッサンの味を信頼しているから連れてきたんだぜ」

 と遠回しに掃除しろと言いながらおだてると、

「なんだ、彼女さんじゃねぇのか、まぁ俺の味に惚れて信頼してもらってんのなら仕方ねぇ、一丁うまいもんでも作ってやるか!」

 オッサンの味に惚れたとか一言も言ってないのに盛りやがったな。

 俺たちは窓際の日の当たる席に座り互いに日替わり定食を頼んだ。

 注文してからあっという間に料理がつく。

 これがこの店のうりだ、正直マックや吉牛よりはやい。

 そして料理もふつうにうまい。


(おいしそうな描写を入れたいけど語彙力ないから割愛)


 彼より先に食べ終わった俺は彼の食べる様子を見ていた。

 この店の料理が気に入ったのか頬をハムスターのようにしてほおばっていた。

 めちゃくちゃかわいい。

 俺の視線に気づいて彼は赤くなるけど、食欲にあらがえず、ハムスターしていた。

 かわいい。

 これ以上見ているのもかわいそうだし俺は勘定を済ませることにした。

 そして何気に量を増やしてくれたオヤジに礼を言う。

 席に戻ると彼が最後の一口を食べ終わり、

 ハムスターを少しずつ小さくしているところだった。

 そしてすべて食べきり幸せそうな息を漏らし、俺たちは店をでた。

 車に乗るときに彼が突然「あぁー!」と叫ぶのでどうしたのか聞くと「ボクお金を払ってないです!無銭飲食になっちゃいます!」

 という慌てる彼の様子を見て、笑いながら

「大丈夫だよ、勘定は済ませてるから。」

 そう言って彼を安心させる。

「よかった~」と胸を撫で下ろす。

 俺はその様子を見て楽しんでいた。

 慌てて表情がコロコロ変わる様子は見ていて面白い、あとかわいい。

 安堵の表情から一変、次に顔を俺に向け

「あっ、え~とボクっていくら払えばいいですか?」

 と尋ねてきた、正直安い店だからそこまで気にしなくていいのに

「別にいいよ、今日は俺のおごりで」

 と言うと、「でも!」と言う言葉を遮って、

「代わりに、今日の夕飯も買い物にでもつきあってもらおうかな」

 と、いたずらめいた笑顔を浮かべた。

 彼の笑顔に対する俺の最大の笑顔だった。

 最初は不満げだった彼だが、

 ただ俺の笑顔がぎこちなかったのか、

 彼もつられて笑いだし、「仕方ないですね」

 と言い、続けて笑顔で

「もちろん、喜んで!」

 と言ってくれた。

 やっぱり俺は彼のこの笑顔には敵わないようで、また彼に惚れてしまった。


 そうして、俺と彼のふたりでの生活が始まった。

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