小池さん「どーでもいいこと その肆よ!」

番外編その四十九 「総理の帰還」

1

 秘書さん

「半年ぶりの帰還ですか……。国外では豆難首脳会談からヘベレケ国のエウロパ共同体離脱でてんやわんや、国内では統一地方選からあまつさえ異世界の東京都知事と総理が入れ替わったのに、我が目本は良くも悪くも相変わらずです。ほっとしたような、ちょっと残念なような……」


 小池さん(本物)

「成熟した組織は会社であれ国家であれ、トップ一人代わったぐらいでは何ともないわよ」


2

 秘書さん

「むしろ大丈夫でしょうね? 異世界のアソーやスガにため口どころから「ごはんおごれ」とねだったり、イシバ、イシハラを都庁の裏に呼び出して胸倉つかんだりしなかったでしょね?」


 小池さん(本物)

「あたしだってちゃんと空気読むわよ。むしろ都知事なんて暇で暇で、存分に羽を伸ばさせてもらったわ。あ、定例会議や会見はちゃんとしたわよ。あたしだって一日三時間はちゃんと働けるんだから。それよりこっちはどうだったの?」


 秘書さん

「多少は私がフォローしましたが特に失策や失言はなかったです。どうも異世界の小池氏は総理になったときのためにいろいろとシミュレートしていたようで、ちょっとした問題もなんとか片づけていました。よく言えば用意がいい、悪く言えば妄想癖ですが……」


 小池さん(本物)

「逆にこっちは慣れない都政でシッチャカメッチャカだったわよ。まぁ全部秘書に丸投げしたし、秘書も秘書で『慣れてますから』と疲れが混じったひきつった笑顔をしていたわ。今思えばこっちに戻るときに無理やり連れてこればよかったわね」


 秘書さん

「なぜそうしてくれなかったのですか! そうすれば私の負担が減り、わが目本がますます発展の憂き目、いや、栄光に輝くのに!」


 小池さん(本物)

「仕方ないわよ。スカウトしたら向こうが拒否したし、何よりあんたが一番知っている人間だったからね」


 秘書さん

「もしや……もう一人の私とか?」


 小池さん(本物)

「違うわよ。あんたの奥さんよ。『こんな無能な総理にした秘書とはいっしょに働くどころか、同じ空気を吸うのさえお断りします!』ってほざいていたわ。よく考えれば失礼な言葉よね。今度あんたの家に殴り込みに行くから覚悟しなさい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る