「でもブサ子ちゃんは後から現れた方じゃなくて最初の恋人を選ぶの!だって本当に愛していたのは最初の人だから。世間体なんか気にしない。確かに同性婚とか出産の難しさとか周囲の理解とか様々な困難が彼女達を待ち構えているけれど、二人の愛に乗り越えられない壁はない・・・・・・」


 真理が完。

 とタイミングよく言った。

 なんとか勢いだけでネームを描き終えることができた。


 書き進めていくうちに私の視界はぐちゃぐちゃに歪み、ネームを描いていたコピー用紙にも涙が染み込んでペンのインクが滲んでしまっていた。


「本当にこうなれば良かったのにねー」


 真理が言った。

 もうどうしようもない事は分かっている。

 夕子の事は心の底から幸せになって欲しいと願っていた。

 でも、やっぱり簡単に吹っ切れるものでは無いみたい。

 

 私は夕子の事が好きだった。


 私は夕子の子犬のような可愛さで笑顔を振りまいてるくせに私といるときだけ本音を見せてくれる、そんな強いんだか弱いんだか分からない不思議さに魅力を感じていた。

 学校で会うたびに気持ちが爆発しそうなのを必死に我慢して平静を装いながら過ごしていたけど夏休み前日の放課後、私は我慢できずに彼女に告白した。

 彼女は二つ返事であっさりと私を受け入れてくれた。私は拍子抜けしたけどその時から私たちは付き合いだした。

 デートの時は私の服に気合が入りすぎとか、柄にも無くクサイセリフを言わされて挙句笑われたりしたけど、一つ一つの仕草が純粋に素敵で可愛くて二人で一緒にいるときは本当に幸せだった。

 手を繋いで握ってくれたときは私の中の永遠に満たされないと思った部分を夕子が埋めてくれたと思ったし、私はこのまま夕子と心まで繋がっていたいと願った。

 

 でも夕子は高校卒業と同時に私と別れた。切り出したのは夕子だ。

 別れの原因を聞かされてないけど理由はなんとなく分かっていた。

 私は黙って頷いた。

 

 そして夕子は高校卒業から2年経った今日、結婚した。

 



 

 

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