夕子は明るくて素直でクラスの中の太陽的な存在だった。

 

 いつも笑顔でクラスメイトからは頼み事をよくされて、嫌でもハッキリと断れない典型的な八方美人タイプ。それに対して私達は教室でクラスメイトの陰口をメシにご飯を食べて盛り上がる日陰者。相容れぬ存在。まさに水と油。水素水と悪玉菌みたいな関係だと思っていた。

 

 いつだったか、真理と私でとある男子の噂や陰口を言って盛り上がっているところを夕子に聞かれてしまい、まずいなー軽蔑されたなーなんて思ってたらこれがまた夕子も意外とイケる口でして。悪口に乗っかってくれるじゃありませんか。

 その時から急速に私達三人の仲は深まり高校を卒業してから今もずっと付き合いは続いている。

 

 ただそのときの陰口のターゲットが私に恋の相談をもちかけてきまして、それを私が夕子に伝えて、そしていつの間にか今日の夕子の相手、つまり夕子の新郎になるとは全く持って事実は小説よりリアルアンドクレイジーである。


「え、美咲が新郎に振られたんじゃないの? そう夕子に聞いたけど」

「はー!?んなわけないじゃん。なに言ってんだあのクソ女! わたしは相談に乗っただけ!! だいたい夕子のどこがそんなに良いわけ ?確かに外見は可愛いけど性格は私らより黒いじゃん」

「”私ら”っていうのはちょっと気になるけど、まぁ確かに悪口言ったら夕子の方がキツイし面白いよね」


 あーだめだ。このパターンは陰口大会に発展する。

 そう思いながらも口は止まるどころか更に勢いを増して回るようになっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る