第四十六話 手抜きできない

「おお! すごいじゃないですか! 生徒さんが作られたクッションですか。ふかふかだ」

「中身が、むしった草だとは思えないでしょう?」


「ええ。それにしても、上手にふわふわに仕上げてますね」

「当然です。収穫、乾燥、裁断、選別、充填。どの工程にも一切の手抜きはありません」


「生徒さんが、一連の作業にプライドを持って取り組まれているということですね」

「いいえ、あの年齢の子たちに高いプライドを求めるのは無理ですよ」


「は?」

「クッションは、火災訓練で三階から飛び降りる時に使われます。作りが甘いと、下手すりゃ死にますから」



【おしまい】

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