第三十二話 懸念

「草むしりの生徒に紛れ込ませたスパイから連絡は?」

「まだありません。でも彼は優秀なエージェントです。職務にはとことん忠実ですから大丈夫ですよ」


「職務に忠実? そらあ、アウトじゃないか!」

「なぜですか?」


「誰が草むしりをまじめにやるもんか。まじめなそいつだけがとんでもない量の草をむしって、間違いなく浮く。君の人選ミスだな」

「彼はプロです。そんなヘマはしませんよ。草むしりは適当にやってます。別の懸念はありますけどね」


「別の懸念だと?」

「女をたらし込んで情報を得るのが彼の特技ですから。中坊相手だと、めっちゃ浮いてるかも」



【おしまい】

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