第10話 因果応報論
「胡桃沢くんどうしたの?なんか顔色悪いけど・・だいじょうぶ〜??」
「おいどうしたよーこうじろ〜顔いつもよりブスになってるぞ〜??」
胡桃沢の顔色を心配してクラスメイト達が声をかけている。
「ああ、大丈夫だよ・・全然・・」
胡桃沢くんなんだか顔がげっそりしてる。
やっぱり昨日お兄ちゃんと喧嘩みたいになっちゃって結構落ち込んでるんだな・・あんなにげっそりするまでお兄ちゃんのこと考えてくれてたのか・・
「胡桃沢くん」
「ん?なん・・・吉丘・・」
声をかけたのが私だとわかると胡桃沢くんはなんだか切ない顔になった。
「そんなになるまで落ち込まないで・・胡桃沢くんは」
「落ち込むに決まってるだろ・・!足りなかったんだから・・!」
「そうだね・・・・・足りなかった?」
「昨日ゲットしたおっ・・・クッションが足りなかったんだよ・・!20個でたりるかと思ったらまだ敷き詰められた・・多分あと10個はいけるな・・・・・俺のミスだ・・・」
「・・・・へー」
「へーって!おっ・・クッション枕元にしきつめられなかったんだぞ・・!!俺は楽しみに楽しみに
胡桃沢くんはこういう人だったことを思い出したよ。
放課後
今俺は吉丘と久我のクラスへ向かっている。
「胡桃沢くん。久我先輩が知ってるかな?お兄ちゃんが咲良先輩を避けてないと困る理由。」
あの時、思いつきで言ったらお兄さんはひどく驚いた顔をしていた。多分、お兄さんが困る理由というのは当たっているだろう。だけどお兄さんが困るような理由が俺には全くわからない。
「知ってるさ。お兄さんと1番仲が良かったのが久我だ。よく知ってるからこそあんなにお兄さんを傷つけられたんだろう。」
「なるほどね。あ、これメールで言われた通り昨日お兄ちゃんのパソコンからコピーしてきたよ。」
「ああ、ありがとう。」
吉丘が俺に渡してきたのはusb。ただのusbじゃない。中身はとても重要なものが入っている。
「これなんのファイルなの?名前が『宿命』なんだけど。」
「それであってる。さすが妹、兄のパソコンをいじるのは慣れているんだな。」
「慣れてはないけど・・・で、何が入ってるの?」
「まあ、見ればわかる。使うことになるかは久我によるけどな。」
久我のクラスに着く。
「おーい、久我。胡桃沢が呼んでるぞ〜。」
「え?俺?」
久我はなぜ呼ばれたかわからないような感じでこちらに来た。
「久我だけど」
「初めまして、二年の胡桃沢滉治郎です。久我先輩に聞きたいことがあって伺いました。」
「聞きたいこと?なんだ?・・・・・・吉丘の妹・・?」
久我は俺の隣にいた吉丘に気づいて訝しげに見ている。
「もしかして、・・結のことか?」
「はい、そうです。どうしても吉丘のお兄さん、結先輩のことについて聞きたいことがあるんです。」
「・・なんだよ?聞きたいことって」
久我はそっけなく言い放った。
「はい、結先輩が梅宮先輩を避けていることは知ってますよね?」
「・・ああ。2年の後半・・・あの時から避けてたな。今も避けてるのか?」
「はい、避けてます。」
「あいつ、。はぁ、、」
「それで久我先輩、結先輩が梅宮先輩を避けている理由を教えていただきたいんです。」
「・・・俺が知るわけないだろ。もうロクに吉丘と口も聞いて」
「久我先輩なら、知ってるはずです。」
「・・・」
久我は無言でいるが、知っているから何も言えないんだろう。
「知ってるなら教えてくれませんか?久我先輩。咲良先輩がそのことですごく悩んでるんです。」
「・・・はぁ。わかったよ。」
渋々ながら話し始める。
「あの時は吉丘、まあ俺もだけど、変に目立ってたんだ。だがら一緒にいるのはまずいと思ったんじゃないか?あいつ梅宮とすごく仲良いからさ巻き込みたくなかったんだと思うよ。」
まさか同じことを言うとは。
「やっぱり本当に仲が良かったんですね。久我先輩結先輩と同じ嘘ついてますよ。」
「は?俺は嘘なんかついてないぞ。」
「しらを切る気ですか・・・・ならこちらにも考えがあります。」
「?」
「先輩一緒に来てください。」
「・・・わかった」
「胡桃沢くんどこに行くの?」
「体育館だ。」
体育館にて
俺はステージに上がり、上にある大型スクリーンを下ろすスイッチを押し、そこで待機する。
「何する気だよ、こんなところにきて」
スクリーンが降りてくる。
「これを見てください。」
リモコンを押しスクリーンに映像が映る。
<うお〜〜〜〜〜〜!!!!おっぱい!おっぱい!!ほらお前も一緒にやらないと!おっぱいおっぱい!!!>
「!!!!!!」
久我はめちゃくちゃ驚いている。
映像に映っているのは久我本人だ。
「な、な、な、なんでこれをお前がもってんだよ!!!」
「こちらの吉丘妹にこっそりコピーしてきてもらったんです。」
<ほら吉丘やってみろよ!!おっぱ!おっぱ!おっぱぱい!!!俺のは雄っぱい!!君のはおっぱい!!はっぴ〜〜!!おっぱ〜〜〜い!!>
<う、うんわかったよ。お、おっぱい・・?>
<もっと元気に!>
<お、おっぱい!!>
<そうだ!!いいぞもっと!!>
「これはあるライブの振り付けを久我先輩が結先輩に教えて、一緒に練習をしているところですね。振り付けを覚えようとで録画していたとは。おっぱい?はぁ・・実にすばら・・・・恥ずかしい映像ですねぇ。」
「うっ・・・・」
久我はこれ以上ないくらいに顔を赤くしている。
「生徒会長の権限を使えば、全校集会のときにこの映像をスクリーンで流すことだってできるんですよ?」
「はぁ?!おまえ!そんなことできるわけ」
「できますよ、俺なら!!」
「っ!!」
「久我先輩!!この人本当にやる気ですよ!!」
そんなに俺を指差して、いい演技だ吉丘。切羽詰まった言い方で久我を説得しようとしてるんだな。うんうん。成長したな吉丘。
「くっ・・待て!ここには吉丘も写っている!これを全校集会で流したらあいつも終わりだぞ!!」
「結先輩のところはすべてモザイク処理をしますのでご安心ください。」
「なっ・・!まだだ!こんなの流したらお前の印象が悪くなるぞ!」
「それも大丈夫です。これをここで見せろと久我先輩に言われたと証言してから、何かの手違いでしょうかと何も知らなかったことを装い、集会を始めます!」
「なにぃ?!!」
この人最低だ。と思う吉丘。
「恥ずかしい映像の前で久我先輩が必死こいて否定するのと、俺がマイクを使って全校生徒の前ではっきり言うのとでは皆さんどちらを信じるでしょうかね?」
「くっ・・!!」
なんて恐ろしい奴だ。胡桃沢滉治郎。こいつは絶対に敵に回しちゃいけないやつだ・・・
「・・・・わかった。言うよ。吉丘が梅宮を避けてる理由。」
「ありがとうございます!久我先輩ならそう言ってくれると思ってましたよ!話が早くて助かります。」
なんか吉丘がすごい軽蔑した目で俺を見てきている。
「なんだ吉丘。」
「別になんでもないよ。クズみ沢くん。」
なんかいつもと呼び方が違ったような気がするが気のせいだろう。
「どうぞ話してください、先輩。」
「・・・・吉丘は、梅宮の好意に前々から気づいてたんだ。」
そこから久我はお兄さんのことをいろいろ洗いざらい話してくれた。
* * *
久我が話し終えると吉丘が
「そんなの自分勝手すぎますよ!何考えてんだ!あのおっぱい野郎!!」
吉丘はお兄さんに対して怒っている、というか情けない、というか納得いかないようだ。
「吉丘落ち着け。男って生き物は案外面倒くさくて繊細な生き物なんだ。」
「なにそれ。それで片付くことかな。」
「片付くことでもないがわかってやれないこともない。が、何事も中途半端にしておくのは俺はあまり好きじゃないな。」
「・・知ってるって言ってもこのくらいだ、随分前に吉丘に聞いた話だしな。今は違う理由かもしれない。あとは本人に確かめてみてくれ。」
「わかりました。ありがとうございます話してくれて。」
「ありがとうございます!久我先輩。」
「はぁ・・俺が言ったってあいつに知られたらまた怒るだろうな。てか俺しか知らないからバレるか・・笑。まぁでもあいつとはもう関わることはないからいいんだけどさ・・・・あの映像は」
「大丈夫ですよ。しっかり保管しておきます。・・・仲直りしてくださいね。」
俺は久我に聞こえないくらいの大きさで呟いた。
「え?」
「なんでもないです。ありがとうございました。では失礼します。」
「ああ。」
「胡桃沢くん言えばよかったのに。」
「・・久我が自分でお兄さんと仲直りしたいと思わないと意味がない。」
「たしかに。そうだよね。」
「それよりも、吉丘、俺を殴ってくれ・・・!」
俺はどうしても!どうしても許せないことがある!!
「え」
胡桃沢くんがすごい形相でなんか言ってきたんだけど。怖っ。
「俺はお兄さんのことを聞き出すためとは言え久我を、おっぱいを使って脅してしまった・・・!!俺は・・!俺は・・!最低なことをしてしまったんだ・・・!!おっぱいに申し訳が立たない・・・!!!」
俺を殴ったって蹴ったっていい。俺は・・本当に最低なことをしてしまったんだ・・。殴られる覚悟はもう出来ている。
「はぁ・・やっぱりそう言う人だよね、クズみ沢くん改め胡桃沢くんは。」
吉丘は俺の頬に手を当て、少しだけ押す。そして困ったような顔をして笑っている。なんだかこの顔を見てると癒され
「・・いやいやいや!流されるところだったぞ!おい、ちゃんと殴ってくれないか!俺はそんなのじゃ気が済まない!!」
「は?もういいじゃん」
「いやだめだ!!」
「え、ちょっと、」
胡桃沢はどんどん吉丘に迫ってくる。
「これでもかってぐらいつよく!さあ!!」
「いいって!」
「よくないんだ!!ほら!はやく!さあさあさあ!!」
「しつこい!!」
バチンッッ!!!!!!!!
「痛っ・・・・・!!!!!!!!」
教室にて
「結構くっきりついちゃったね・・ごめん・・」
吉丘は俺の頬についた手形を申し訳なさそうに見ている。
「こ、このくらいで丁度いい。あんな罪を犯したんだ・・戒められて当然だ。」
「罪って・・」
「でもまさか久我からお兄さんにはぴおぱを勧めていたとはな。久我も巨乳のエロアニメを侮辱している時本当は辛かったんだな・・今の俺のように・・・」
「あ、そうだ!なんであの『宿命』ってファイルがあること知ってたの?」
「ああ、あれか。あれは前にお兄さんの部屋でpcのエロゲーをやっていた時に見せてもらったんだ。」
【回想】
「あれ?お兄さん、この『宿命』ってなんですか?」
これはおっぱいに違いない・・!是非見ておきたい。
「あ、これは・・・」
「おっぱい・・なんですか・・?」
「ま、まぁそうだけど・・・」
「・・・見せてくれないんですか?」
「え。ん〜まあいいけど・・」
お兄さんは渋々ながらにも『宿命』というファイルの中身を見せてくれた。
数々のおっぱいもあったが他にもいろんな写真、主に動画が入っていた。
「これは・・ライブの振り付けの練習ですか?あとはイベント会場で撮った写真もありますね。」
「あー・・うん。」
「この人と、ライブとかイベントに一緒に行ってるんですね。」
「・ ・・うん。まあな・・」
【回想終わり】
「あの時の動画に久我の名前が度々出てきたのを覚えていたんだ。それで梅宮先輩からあの話を聞いた日の夜にそういえば久我ってどこかで来たようなとふと思い出した。」
「そうだったんだ・・お兄ちゃんと久我先輩本当に仲がよかったんだね・・。」
「そうだな。いろいろあったが久我との思い出は捨てられなかったんだろう。」
「久我先輩が避けてる理由を始め正直に言わなかったのも、」
「お兄さんが言わないでほしいと思ってることを、もうあの時みたいに自分の口から言いたくなかったんだろう。」
「・・・なんか悪いことしちゃったね。」
「そんなことない。これで解決するんだから。」
「・・・仲直りしてほしいね。」
「・・・そんなしんみりしてないでほら行くぞ吉丘。」
「え?」
「お兄さんに確かめに行くぞ。」
「・・・うん!」
確かめたそのあとはお兄さんの意志で行動してもらう。
この先どうするかはお兄さんが決めることだ。
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