田中カナタ

真生麻稀哉(シンノウマキヤ)

第1話 鈴木家―2013年3月6日

「鈴木」と表札のかけられた一軒屋。

近くの堤防沿いに咲く桜の木から散る花びらが、家の屋根に積もっている。

玄関の前に積もっている。

赤い朝焼け―



1階のシャッターガレージ。

その昏い空間に、黄色いカーゴの車体。

そのそばにはドラム缶。

ドラム缶から白い煙が立ち昇っている。


ドラム缶の中には青い液体がなみなみと満たされ、金属フレームの華奢なメガネと、

黒いシャチハタが浮かんでいる。

ドラム缶のそばには三つのポリタンクが並んでいる。

タンクのラベルには「重クロム酸ソーダ」、「濃硫酸」、「塩酸」と

それぞれ書かれている。


ガレージから室内に通じるドア。

その前には二階に上がる階段がある。

ギシッ、ギシッと、ひどく重々しい音を立てて、階段を上がっていく二本の男の足-

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