第33話 33

「ああああああああ!」

アダイブ・シエルは気合を入れて力を集中する。

「なにをする気だ!?」

シューは、アダイブ・シエルが何かを仕掛けてくると身構えた。

「いでよ! 神の使徒たちよ!」

アダイブ・シエルの呼びかけに、空に複数の天使たちが現れる。

「なんだ!? あれは天使なのか!?」

アダイブ・シエルは無数の天使を召喚した。

「俺は神が創り出した天使の中の天使。これぐらいできて当然だろう。」

してやったりの顔をするアダイブ・シエル。

「予想外の者まで召喚できたようだ。」

アダイブ・シエルが呼び出したのは天界の使徒の白い天使だけでなかった。

「黒い天使!?」

シューはアダイブ・シエルが召喚した者の中に黒い天使が混じっていることに驚く。

「堕天使!?」

「いや、俺に堕天使を呼び寄せる能力は無い。あれは冥界の使徒だ。俺に冥界の女王と死の女神の血があるから、呼び出すことができたのだろう。ワッハッハー!」

「ペルセポネーさん、ヘカテーさん。」

アダイブ・シエルは冥界で2人の血を吸っている。そのため2人の能力を使用することができるのであった。

「クソ! おまだけは絶対に許さない!」

シューは吸血天使アダイブ・シエルに血を吸われたヘカテーやペルセポネーの無念を考えると怒りの感情が込み上げてくる。

「人間のおまえに何ができる? シューよ! 天使の無数の矢を受けて死ぬがいい!」

アダイブ・シエルが生み出した天使たちが天使の弓矢を構える。

「エンジェル・アロー・ショット!」

アダイブ・シエルの合図で天使たちが一斉に矢を放つ。

「クッ!?」

無数の放たれた矢がシュー目掛けて襲いかかってくる。

「エクレアさん、僕に力を貸して下さい!」

シューは剣に宿るエクレアに救いを求める。

「ブラッディ・アロー!」

ブラッディソードから血が噴き出し、無数の血の矢がシューの周囲に展開される。

「血の矢だと!?」

思わずアダイブ・シエルも無数の血の矢を見て驚いた。

「ファイア!」

シューの指示で無数の血の矢が、まるで炎になったかのように、天使の矢を目掛けて飛んで行く。

「ドカン!」

無数の天使の矢と血の矢が衝突し、大爆発を起こす。

「どうだ! おまえの攻撃なんか、僕には通用しないぞ!」

シューはアダイブ・シエルの無数の天使の矢を防いだ。

「矢がダメなら、剣で殺すまでよ。」

無数の天使たちが弓矢から剣を手に持ち変える。

「エンジェル・ソード・アタック!」

天使たちがシューを目掛けて一斉に斬りかかる。

「こい! 全部、倒してやる!」

シューは血の羽を羽ばたかせ天使の群れに突撃する。

「でやあああああ!」

シューが加速した勢いのままに、天使を一人切り捨てる。

「その強がりが、いつまで続くかな? やれ! 天使ども!」

アダイブ・シエルの号令に天使たちがシューに襲い掛かる。

「負けるもんか! 諦めるもんか! 僕は勝って、エクレアさんに愛に行くんだ!」

シューは気合を入れて、血の翼で加速して、天使を斬り、天使の攻撃を避ける。

「何体きても同じだ!」

シューは17体、18体と次々と天使を倒していく。

「それはどうかな? 天使に比べれば下等生物だな。人間は。」

「なんだと!?」

「シュー、息が切れてるぞ。」

「はあ・・・はあ・・・。」

シューは無数の天使との戦いで体力を消耗していた。アダイブ・シエルの創り出した天使は中々の強敵でシューは体力だけでなく、神経もすり減らしていた。

「それに、その背中の血の羽。最初に比べれば小さくなってないか? 羽が小さくなるごとに、おまえのスピードも落ちている。これは深紅の剣ブラッディソードの血の残量が減っているからだろう。見ろ、剣の赤い色が薄くなっている。」

アダイブ・シエルは吸血天使としての残虐性だけでなく、冷静な洞察力も兼ね備えていた。

「クッ、全てお見通しか。」

シューは冷や汗をかいていた。アダイブ・シエルの言った通り、ブラッディソードの血液残量が、あと少しになってしまっていた。別に天使たちを剣で斬っても血を吸える訳ではなかった。天使たちはアダイブ・シエルが生み出した血の通わない、ただの傀儡だったからだ。

「もう、終わりだな。天使たちよ。一斉に襲い掛かれ!」

アダイブ・シエルは戦いを終わらせようと全天使に命令し、無数の天使が一斉にシューを攻撃する。

「ここまでなのか!? 僕はエクレアさんに会うことができないまま、殺されるのか!?」

さすがのシューも襲いかかってくる天使の数の多さに諦めようとしていた。

「エクレアさん、ごめん・・・。」

シューは自分の身が危ないのに、エクレアを助けられないことを申し訳ないと思った。さすがのシューも体力が尽きそうで、少し無気力になっていた。

「ガガガ!」

無数の天使がシューを襲う。

「神の光炎。」

その時、シューに襲い掛かる天使たちを焼き払う光と炎が放たれる。

「なに!?」

アダイブ・シエルは邪魔が入ったことに驚く。

「待たせたな。」

「あなたは・・・誰ですか?」

シューは白い光を放っている者が誰だか分からなかった。

「私だ! 死を司る天使サリエルだ!」

「サリエルさん!?」

シューはサリエルと言われて驚く。なぜなら黒い堕天使の姿から、白い天使の姿に変わっていたからだった。

「黒から白に変わっただけで、だいぶん印象が変わりましたね。」

「名前も変わったぞ。神の光と神の炎を司る天使こと、うっかりウリエルとは私のことだ。ワッハッハー!」

ウリエルは、久々に天使に戻って笑いが止まらない。

「うっかりウリエル!?」

これが噂のうっかりウリエルであった。

「たかが堕天使が天使になったところで、天使一人に何ができるものか!」

アダイブ・シエルはウリエルの登場にも動じることは無い。

「一人だけじゃないぞ!」

その時、もう一人白い天使が現れ、アダイブ・シエルの呼び出した天使たちを倒していく。

「もう一人白い天使!?」

シューはウリエルだけでなく、もう一人の白い天使の登場に驚く。

「さあ! 剣と秤を持った神の裁きを司る天使! ミハイルこと、ミカエルとは私のことだ! キャハハハハ!」

黒い天使の神の裁きを司るミハイルは、白い天使ミカエルであった。

「うざい・・・。」

「性格までは変わらないんだね。」

シューとウリエルは黒い天使の堕天使から白い天使に変わっても、キャラクターのウザさが変わらないミカエルに呆れる。

「どこからでもかかってこい! このミカエルが成敗してくれる! キャハハハハ!」

もう誰もミカエルを止めることはできない。

「ふん、たかが天使が2人来たぐらいで喜ぶなよ。このアダイブ・シエルの敵ではないわ!」

アダイブ・シエルはシューとウリエルとミカエルの3人を目の前にしてもビクともしなかった。

「ちわ~す。宅急便です。」

その時、シューの元に宅配便の男が現れた。

「え? 宅配便?」

「ハンコお願いします。」

「はい。」

シューはハンコを押す。

「ありがとうございました。」

荷物をシューに渡して、宅配便は去って行った。

「誰からだろう?」

シューは荷物の差出人の名前を見た。

「ハーデースさん!?」

宅配便の差出人は住所、冥界で差出人は冥王ハーデースだった。

「あ、手紙がある。」

シューは手紙を見つけ読む。

「約束の冥界エクレアが焼きあがった。おいしいぞ。おまけの神の血ドリンクも付けてやる。必ず、勝てよ。エクレア少年。」

ハーデースは約束を忘れていなかった。送られてきたのは、エクレアさんが大好物のエクレアの冥界エクレアであった。

「ハーデースさん、ありがとうございます。」

シューはハーデースの好意に感謝する。

「エクレアさんが大好きなエクレアが届いたよ。」

シューは冥界エクレアのおまけとして届いた冥王ハーデースの血が入った神の血ドリンクを開けて、ブラッディソードに血をかけて吸わせる。

「おいしいかい? ハーデースさんの血は?」

ブラッディソードの色が神の血ドリンクを吸って、深紅に染まっていく。神の血を吸い剣は赤い光を放ち輝いている。

「そろそろ目覚めてよ。エクレアさん。」

神の血を吸い深紅の剣ブラッディソードに宿る神の血を司る天使エクレアが目を覚まそうとしていた。


つづく。

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