破壊神、俺。

愛川きむら

破壊神、俺。

 殺してやろうとか、もはやそんな段階ではなかった。壊してやりたいと思った。そう、ぶっ壊したいんだ。頭の中で繰り広げられる寸劇。小学生、中学と長々と俺をいじめてきた同級生たち、就職先でパワハラを起こし続ける上司、心の支えにしていた元彼女の頭と脇腹を持って反対方向に引っ張る。するといともたやすく胸のあたりから引きちぎれていくのだ。そんなことを考えながら今日も昼を過ぎた。

 冷め切った家、墓場かと錯覚する職場と母校、二度と見たくないデートスポット。それらを俺の身長よりビッグサイズのハンマーで叩き割りたい。俺はRPGを想像している。俺よりも大きいハンマーで簡単に崩れていくそれらは重くもなく、まるで布団にもぐりこむかのようにしゅるんと居座る。ついに物に温もりを求めるようになった俺はもはやお手上げ、もう行くところまで行ったなって思うくらいに清々しい。燃やし尽くしてしまいたい過去の出来事も、瓦礫に埋もれいるとやがていい思い出に思えてくる。自分までコンクリートになっていくようだ。不思議と心は穏やかだ。そして空を見上げる。曇りでもいいし晴れていてもいい。だけど、雨だけは絶対に嫌だな。俺は生まれつき天然パーマだから、雨に濡れるとよりうねるんだ――。


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破壊神、俺。 愛川きむら @soraga35

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