わたし
10:22
のんびりと目が覚めた。
今日は土曜日、君に会える日だ。
待ち合わせは13時、寒いし暖かいものを食べよう、ということで、参鶏湯になり、新大久保になる。
洋服や靴を考えるのも、化粧も、髪も、下着も、鞄も、香水も、靴下やタイツでさえ、限られた時間で考えに考え抜かなければならない。決まりではない、だけど、そうしたいのだ。大抵の女子はそうだろう。
狙い過ぎてもいけない、気を抜いてもいけない、絶妙なラインだ。私は大体、黒で纏めてしまう。黒は、ミステリアスでセンシュアルな女を演出できると思うから。大体、惹かれるモデルは、黒を着ている。タートルネックはずるいくらいに女らしい。そして、白い透けそうな肌に、真っ赤なリップ。
私の中での、「女」だ。
遅くなったけれど、私の名前は、キキ。これは両親が好きな映画の主人公の名で、仕事はモデル事務所に入っている。
今、会おうとしているのは、友達の紹介で知り合った、6歳上のユキ、女の子みたいな名前だけど、男。仕事は一言で纏めればIT系エリート。私もまだ彼のことをちゃんと知らないから、一緒に知っていけたら嬉しいです。
さて、黒のタートルネックに、黒スキニー、黒ガウンコートを羽織って、シルバーのマイクロバッグを肩から下げて、黒のピンヒールを履き、お腹から喉まで何かが跳ね上がるような気分で玄関を開けたら、見事に雨模様の東京!準備に追われて窓の外に気づいていなかったのだ。
「天気予報は曇りだったのに、最高ね」
そう呟いて、しぶしぶブーツに履き替え、傘を持って仕切り直した。
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