第14話 悪い癖

 千佳と会う度に紙ひこうきを飛ばし合って、だけど真実は何も明かさないまま。次第にお互いの関係が薄っぺらいモノのような気がしてよそよそしくなりそうだった。俺の悪い癖だ。親しくなり切れない。特に紙ひこうき届け屋をするようになって余計に…いや、ずっと昔からかな。

 そのせいもあって気になっていたことをオブラートに包めないまま文字に表した。

『たまに目を伏せて言葉を選んでる姿が嫌いだ。言葉を選ばれたくない。』

 千佳は傷ついて何も言わずに帰るかもしれない。それならそれでいいなんて投げやりな気持ちも多少はあった。しかし予想に反して紙ひこうきは飛んできた。文句の一つでも書いてあるのかと紙ひこうきを開く。

『気分を悪くさせちゃってたらごめんね。気をつけるよ。』

 読んでいる側からまた紙ひこうきが飛んでくる。それも開いて確認する。

『悪いところを指摘してくれる人って貴重だと思う。私のこと考えてくれたんだよね?ありがとう。』

 私のことを考えくれた?疑問符が浮かんでその疑問から中学生の頃に届いた紙ひこうきを思い出した。

 まだじいちゃんが紙ひこうき届け屋をしていて。本物の紙ひこうきで届いた思い。そのせいで仲違いしたままの奴のことを…。なんでじいちゃんは俺にこんな思いを送ったんだ!って思って…。

 なんでこんな思いを送ったんだっていう紙ひこうきも…?

「ごめん。俺、ちょっとやらなくちゃいけないことがある。」

 千佳の元に歩み寄ってそれだけ伝えると走り出した。

 俺を思って…俺を思ってなのか。

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