やがていつかは飴色の

 乳白の綺麗な箸でつついてみたら、汁の中で芋は滑った。

 視線の先の新妻は、俯き加減で俺を窺う。

「次はうまくやるから」


 挟もうとしたらほろりと溶けた。

「お匙ちょーだい!」

 末っ子の声が響く。おれもあたしもと箸が鳴れば、肉じゃが小丼が勢揃い。

 うすらと色づく箸を置き、立ち上がる妻を視線が追う。

「ほら」

 匙の数は子供の数ともう一本。


 孫娘は、鳴って離れて交わって、小さな箸を懸命に動かす。

 薄飴色した女箸は、皿へと程よく染みた芋を分け。

「練習、しよっか」

 同じ色した男箸で、たまねぎを一欠口へと運ぶ。


「一緒に入れてやってくれ」

 一番の着物を纏って花の中。そっと濃飴の箸を握らせる。


 ──あの世でだって、きっと俺が食わせてやる。

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