白いティーカップ
特注だという彼女のカップは軟水で淹れた紅茶の色がよく映えた。ボーンチャイナほど鮮烈ではなくどこかまろい白さを見せて、彼女の色白の手によくなじむ。
「いいでしょう?」
彼女は笑う。とろりと笑う。
一年前の猜疑と不安に翳った顔などどこにもなく。喪服を脱いだその様は、本来の彼女の穏やかさを見せていた。
「安心したよ。だいぶ落ち着いたね」
促されるまま茶を菓子をと頂いていく。
カップを見たいと伸ばした手は宙を掴むことにはなったけれど。アフタヌーンは穏やかに過ぎていく。
「ありがとう。もう何の心配もないわ」
ほのかに湯気立つ鮮やかな茶を、彼女はそっと口元へ運ぶ。
「あの人はもう、どこへも行かない」
注ぐ茶の色は血のような。
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