魔法銃
レオンは久し振りに拠点へと戻っていた。
アインスとは通話で毎日連絡を取り合っているのだが、報告書に目を通して欲しいと懇願されたためである。
レオンは執務室で報告書の山を見てげんなりしていた。
今まで目を通してこなかった自分が悪いのだが、昔から書類は作るのも見るのも苦手意識がある。
(仕事以外で書類の山を見る羽目になるとは……。これは一体なんの嫌がらせだ?)
ちらりと隣に視線を移すと、アインスが満面の笑みで笑いかけてくる。
今更目を通さないわけにも行かない。レオンは覚悟を決めて書類の束を一つ手に取った。
(これは拠点周辺の調査報告書だな。森に生息する魔物の最高レベルは凡そ40、驚異になる魔物の存在はなしか――)
レオンは数時間かけて書類に目を通し、最後にアインスに視線を向けた。
「アインス、以前伝えた魔法銃はどうなっている?」
「カートリッジ式の試作品は既に出来上がっております。ですがもう一つの方は……」
アインスは申し訳なさそうに言葉尻を濁した。
それだけで上手くいっていないことは手に取るように分かる。
「難しいのか?」
「はい。魔力の吸収は問題ないのですが、特定の魔法を打ち出す仕組みが分かっておりません。特殊な方法で魔法陣を刻み込んでいると思われますが、その方法を解明できていないのが現状です。もし解明できたとしても、刻み込む魔法陣の大きさを考えますと――」
「銃に刻むのは無理ということか……」
「その通りでございます。もっと大きな物でしたら可能なのですが……」
(それでベルカナンの大砲は大きかったのか。魔法陣が一番小さい
「アインス、もう一つの魔法銃は忘れて構わん。カートリッジ式の試作品はどこにある?」
「私が預かっております」
アインスはインベントリから魔法銃を取り出すと、両手で恭しくレオンに差し出した。
アインスの手に置かれているのは漆黒に塗装されたリボルバー銃。レオンが拳銃に触れると、金属独特の冷たい感触が掌に伝わってきた。
「リボルバー銃か、外見は見事な出来だな」
「お褒めに預かり光栄にございます。魔法銃の製作に当たっては、
銃は真っ黒に塗装されているため見た目では分からないが、恐らくグリップもオリハルコンで出来ているのだろう。
手に持つとズシッとした重さが伝わってきた。
弾丸だけは光を帯びた銀色で、ミスリルであることが一目で分かる。
「これで魔法を撃つことが可能なのだな?」
「はい。基礎となった拳銃は、回転式拳銃コルトパイソンでございます。弾丸の中には純度の高い封魔石が使われており、砕いて丸く磨いたものが二百個入っております。そのため、一つの弾丸で
(弾丸一つで
レオンが浮かれるのも無理はない。
魔法を連続で撃ちまくるという、ゲームの時には出来なかった夢が、今まさに実現するのだから。
「使用方法は普通の拳銃と同じでよいのか?」
「弾丸が直接出るわけではございませんので少々異なります。
(取り敢えず
「うむ。よく出来ているな」
「ですが、弾丸に入っている封魔石は数を増やすため小さくしております。そのためツヴァイの
「問題はない。ツヴァイは従者の中では最高の魔力値を誇る。
「それでは、魔法を充填する際には拠点にお戻りください。弾丸は全部で十二発ご用意しております。お望みであれば、他の魔法を封じ込めた弾丸もご用意できますが――如何なされますか?」
「それだと封魔石を大きくする必要があるのだろ?」
「仰る通りでございます。弾丸に入る封魔石の数は減少しますが、
(それなりの数を封じることができるのか……。でも必要ないよな、どうせこれはただの遊びだ。もし俺が本気で戦うような相手なら、こんな
「いや、今は必要ない。もし必要になったら、その時にまた指示を出す。それより先ずは、魔法銃の試し撃ちを行う。適当な標的を闘技場に用意しろ」
「畏まりました。直ぐにご用意いたします」
レオンはその後、闘技場で
鉄の塊が
「凄いな……」
(流石はツヴァイの魔法だ。
出来上がった魔法銃やツヴァイの魔法など、レオンは改めて従者たちの性能の高さに驚かされるばかりであった。
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