覚醒⑭

「私は怪我を覚悟の上で、お前に斬りかかるよう命じたのだ。お前が悪いわけではない。それにお前は私の守護者だろ?お前がいなくて誰が私を守ると言うのだ」

「それは……」

「アーサー、お前に罪はない。あるとすれば、お前の気持ちも知らず無理な願いを言った私にある」

「そのようなことは断じてございません。主のために命を投げ出すのは臣下として当然の務め。レオン様に罪などあろうはずがございません」


(うわぁ、らちが明かない。何なのこの子?もしかして反抗期なのか?大人しく従っていれば可愛いのに。よりによって、自殺願望でもあるのかよ)


「ではこうしよう。今回の件は私に罪はない。そしてアーサー、お前にも罪はない。これでよいな?」

「ですが、それでは私の気が収まりません。この命を持って償わせていただきます」


(何なんだ?もしかして何か特殊なプレイなのか?俺には全く理解できないんですけど……。そう言えば、さっきは強めに命令したら言うことを聞いてくれたな。強く命令すればいいのか?)


 引き下がらないアーサーに、レオンは敢えて怒鳴り声を上げてみた。


「何度も言わせるな!私の命令が聞けないのか!」

「も、申し訳ございません!」


 レオンの不機嫌そうな声に、アーサーは緊張した面持ちで深々と頭を下げた。


「その剣を持っていま直ぐ下がれ!」

「はっ!失礼いたしました!」


 機敏に立ち去るアーサーの後ろ姿を見て、レオンは面倒な守護者を持ったなと肩を落とす。


(アーサーを言い聞かせるには強めに命令すればいいのか。他の従者はどうなんだろ?アーサーみたいなのばかりだと先が思いやられるな……。それに新たな問題もある。痛みを感じるのは戦闘では致命的、痛みでまともに戦えなくなる。これもどうにかしなくてはならないな……)


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