能ある鷹はクドリャフカ

える

第1話日本の心、届けます。

私の名前は仲村渠譲。

名前の後半がぐじゅぐじゅしてる事と、どこまでが苗字か分からない事には一種の誇りすら感じている。


ある日、私が道を歩いていると…

そうそれは閑静な住宅街、春の木漏れ日が降り注ぐ街路樹を眺めながら闊歩する私。


そんな私の目線の先に、それは落ちていた。


陽光により白く輝く米。

さらにその周りをキラキラと流れる…溢れた後の水。


そんなワンセットが落ちていた。


そうだ交番に届けよう。


今は亡き、いやまだいる。元気に、そう元気に今日は旅行中の祖父もよく言っていた。

「たかしや、人の為世の為に働きなさい。」

と、そうやって従兄弟に言っていた。


しかし届けようにも如何にして運ぶか。


私の家は近くはない。

算数の文章問題に出てくるレベルの距離がある。


ここは私のコミュ力を発揮する時。

周りを見渡し、1番優しそうな…優しそうな人が設置してそうな表札の家を訪ねる事にした。


ピンポーン…

右手の薬指でソッとインターホンを鳴らし、そう呟いた。


中から出て来たのは、30代半ばくらいの人妻であった。

私は指についた指輪を見逃さない男。ふふふ


数分の話し合いの結果、訝しむ彼女を説得しタッパーをゲットした。




拝啓、天国の…熱海のお祖父ちゃん。元気にしていますか。

お茶を啜っていますか。

私は今、道で米を掬い上げています。

慈しみの心で掬い上げています。


ポエミーな気持ちにはにかみながら私は米の救出に着手した。


さて、残るは水だ。

水は、幸いシリカゲルを持っていて良かった。

これで吸って回収しよう。


シリカゲルで液体を吸い上げるのは慣れたものだった。

幼少の頃より、シリカゲルで液体を吸い上げる事を趣味にしてきた私にとって、それは箸で納豆を一粒ずつ摘まみ上げるよりも簡単な事であった。




そんな仲村渠譲を見ながら黄昏る沢良宜良宜の物語が今始まる。

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