第3話 異世界

なんだろう。

この心地の良い風。太陽。

ふと目を開ける。


「えっと…。ここどこかな?」


思わず苦笑いしてしまう。

ただ、ここは地球ではない場所である事は確か。辺りは草原が何処までも広がっていて、草の青々しい匂いが風と一緒にほわっと香る。


私は辺りの状況を理解したあとに自分の服装をみる


「って…えっ!」


さっきまで、着ていた制服の代わりに、今どきの丈が太もも辺りの桜模様の薄ピンクの綺麗な着物を着ていた。

靴は大きな鈴を2個くっつけた下駄。

それに、髪の毛が黒から毛先に掛けて薄くなっていく淡い桜色になってる


異世界転移って普通そのまんまの格好で行くんじゃないんですか

なんで、こんなコスプレみたいな衣装になったんだろ

もしかして、ここは江戸時代かなんかの、和洋文化にファンタジー要素つけた感じなのかな?


とりあえず、ここが何処なのか、どこへ向かえばいいのかも分からないから人を見つけて聞いてみよう

そう思って私はこの何もない殺風景の草原を歩き続けた。

3時間ぐらい歩いたけれど、一向に景色が何一つ変わっていない。

このまま餓死してしまいそう…もうお腹ペコだし。

私は空腹と疲れで地面にしゃがみ込んだ。

1人は慣れていたはずなのに、何故か急に涙が溢れてきた。

だめだ。歩かなきゃ。

再び私は泣きながらも歩き初めた。

10分ぐらいたっただろうか?突然目の前から黒い影が近づいてきた。


「そこのお嬢ちゃん、どうしたんだ?」


おじいちゃんのようなカンロクのある声が聞こえた。

顔を上げてみるとその声の正体は…


「て、天狗?!?!」


大きな黒い羽根を生やす妖怪。

そしてピノ〇オみたいに伸びた、赤い鼻。

まちがいない、天狗だ。

やっぱり和風系ファンタジーなのか?!


「なぁに、お前さんを食ったりはしないよ。人里に行きたいならワシが連れて行ってやろう」


自然と私の涙は収まり、ここはやっぱり元の世界、『地球』で無いことを改めて確信した。

このまま草原に居ても餓死するだけだし…ちょっと不安もあるけどこの天狗さんの手を借りようかな…。


「声を掛けていただき、ありがとうございます。お言葉に甘えて人里に連れていって貰えないでしょうか?」


「うむ。あと、そんな畏まらなくてもいいぞ?」


「わ、わかりましたっ」


と私が返事をすると、天狗は大きな黒い翼を広げた。


「ほれ、乗っていいぞ。」


すっごい大きいなぁあと思いつつ、天狗さんの背中に乗らせてもらった


「天狗さん、助けてくれてありがとう」


「いいんじゃよ…よし、飛ぶぞ!!捕まっとけ!!」


「うん!」


返事をすると、天狗は翼を羽ばたかせた。

さっき歩き回っていた草原がどんどん、離れていく。森をこえ。海の上を飛んでいった。


「そういえば、なぜ君は、さっき泣いていた?」


突如こんな質問が天狗さんから来た。


「実は…。親友だと思ってた人に裏切られてね…」

いままで、あったことを全て天狗さんに聞いてもらった

話が終わると少し間が空いてから


「そうか。辛かったな…」


とだけ言ってくれた。

きっとこれも天狗さんの優しさなんだなと思った。


それにしても、なんでこの天狗は私を助けてくれたんだ?会ったこともないのに。

私はこれまで、こんなに優しい人と私は出会ったことはなかったのに、異世界に来た途端すぐに出会ってしまった

ここでなら、私も少しは変われるかな…そんな希望を胸に抱いた



それから、日が暮れようとしていた時。

空の様子からして6時ぐらいかな


「もうすぐ人里だ。それと君に贈り物だ。」


天狗さんは1本の道とその周りに木が沢山植わっている森みたいな所に、翼を下ろした。

そしてら天狗から差し出されたのは黒い眼帯だった。

うん。贈り物は嬉しいし、ここまで助けてくれたのも感謝してる。だけど…。これは…流石に厨二病ぽくないか?!


「こ、これは…?」


「それは、自分の身を守るための物だ。」


天狗さんのいう事だし、きっと何か、凄いものなのかもしれない。


「こんなの、大切そうな物貰っていいんですか??」


「ああ、もちろんだ。それと、今日ワシと会ったことは誰にも話しちゃいけないからね」


天狗は今まで、見せたどんな表情より真剣な顔でいった。


「わかった。話さないよ。あと、この眼帯をくれる事と私を助けてくれて、ありがとう。本当に助かったよ。この恩は一生忘れない」


「ああ。これから頑張ってな」

「それと、ここの道を真っ直ぐ歩いていくと、王都に近い栄えて都市がある」


「わかった!天狗さん!ありがとう!」


「では、また」


「うん!また!」


私が手を振ると天狗さんは、大きな翼を広げ、元いた草原の方向に飛び立っていった。


椿は今度こそ、自分の居場所を作って幸せに生きよう。そう決意したのだ。

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